研究紀要第89号 「事例に通した教育相談の進め方に関する研究 開発的な指導援助のあり方 第2年次」 -101/109page

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4.将来への向上の意欲を高めるための援助指導の実践

 第1年次の研究においては「将来への向上」に関して,次のようにとらえた。

「将来への向上とは,児童生徒が自己理解をもとに,自分への誇りと自信をもち(自尊),将来への見通しを持ちながら,自らの向上に努力できること」である。

 第1年次の研究で明らかにされた「12の基本的対応」の中で,将来の向上に関するものとしては次の ような項目をあげることができる。 

10 自分自身にとっての目的意識を明確にさせ,将来について考えさせる。
児童生徒の自己理解の深まりや自尊感情の高まりを援助し,「目標に向かっての努力」につながるような励ましをしたり,認めたりするかかわりを通して,自己実現に向けて努力するよう指導援助する。
12 家庭との連携に配慮し,児童生徒に対する理解と援助をより適切なものにする。
教師や保護者が,児童生徒にやさしさ,たくましさ,決断力,勇気考え方等を示したり,生きる尊さを分からせ,将来の夢や目標設定に役立てられるようにする。

 今回の研究では,10、12に視点をあてて実践した。


人 生 の 先 輩 に 学 ぼ う

(1)実践学級 工業高校3年
        男子38名 女子7名 合計45名

(2)学級の実態

 入学以来,学級編成替えもなく,落ち着いた雰囲気の学級である。学力も学年8学級の中では最も高い学級(科)で,大半の生徒は学校生活での目標を設定しながら,意欲的に学習活動や部活動に取り組んでいる。

 5月下旬に行った進路希望調査では,大学・短大希望10名,専門学校希望12名,就職希望21名未定2名で,進学・就職希望者の割合はほぼ同じである。

 また,この学級には生徒の自主性を養うという観点から,様々な場面で班単位の活動が多く取り入れられている。特に授業(実習)や特別活動では生徒の自主的な活動が盛んである。

 事前調査の結果を見ると,自分に自身や誇りを持つことができずに,将来の夢や目標に向かって積極的に努力できない生徒もいる。また,多くの生徒はまだ自己実現に向かって努力を積み重ねようとする姿勢を確立できずにいる。

(3)ねらい

 「先輩の体験談を聞く」を実施することによって,個々の生徒に自己実現に向かって意欲的に生きる生き方を学ばせるとともに,将来への向上の意欲の低い生徒には「個別教育相談」を実施し,自己理解を深めさせ,自尊感情を高めさせながら,自己実現に向かって積極的に努力できるようにさせる。

(4)実践の内容・方法

 次のような将来への向上の意欲を高めるための指導援助を試みた。

[1] 指導援助の流れ
[1] 指導援助の流れ

a 「将来への向上」に関する開発的な指導援助のための基礎資料を得るために事前調査を実施する。
b 「先輩の体験談を聞く」を実施するにあたって,先輩から話してもらいたい内容について班ご

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