研究紀要第89号 「事例に通した教育相談の進め方に関する研究 開発的な指導援助のあり方 第2年次」 -102/109page

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とに話し合う。
c ロングホームルーム(2時限)を利用して,2人の先輩の体験談を聞く。
d 先輩の体験談を聞き,感想文を書く。
e 感想文について班ごとに話し合い,その内容を学級全体に発表する。
f 事前調査や観察の結果をもとに,個別教育相談を実施する。(30分程度の面接を2〜3回)
g 今回の「将来への向上」に関する開発的な指導援助の効果をみるための事後調査を実施する。

[2] 指導援助のポイント

上位,中位群の生徒には,社会人あるいは大学生として自己実現に向かって意欲的に生活している先輩の体験談を聞くことによって,自分の今の生活について考えさせ,将来への向上に向けて職業観を確立させる。
下位群の生徒には,自己理解を深めさせ,自尊感情を高めさせながら,将来の目標を具体的に設定させる。

[3] 実践の経過

ア 先輩から話してもらいたい内容の検討

 進路希望調査の結果から,多くの生徒は将来の希望や目標は持ちながらも,どのように自分の進路を決定したらよいのか,また,高校時代にどのようなことを身につけておかなければならないのかなどの悩みを抱いていることが分かった。そこで,生徒たちに自分らの悩みを解決するにはどうしたらよいのかを話し合わせた。その結果,本校の卒業生で,活躍している先輩に社会人や大学生としての生き方,高校時代の生活の仕方などについて話してもらうことにした。

 まず,「先輩の休験談を聞く」を実施するために,先輩から話してもらいたい内容を各班で話し合い,次のようにまとめた。

○ 進路を決定する時,どのような考えで進路を決めたのですか。
○ 社会人あるいは大学生として,どのような夢や希望を持っていますか。
○ 高校時代にしっかり身につけておかなければならないことはどんなことですか。

 先輩には,生徒が話してもらいたいと思っている内容を事前に連絡し,体験を通して話していただけるようにお願いした。

イ 先輩の体験談を聞く

 ロングホームルームの時間を利用して,先輩の体験談を聞いた。学級には就職を希望する生徒,進学を希望する生徒がいることから,高校卒業後就職して活躍している先輩と,進学して大学生活を送っている先輩2人に話をしてもらった。内容は,事前にお願いした内容の他に,[1]社会人として働くことの意味や,責任ある仕事をすることの厳しさ,[2]大学生の日常生活のことや,学問をする楽しさなど,体験を通して具体的に紹介された。 一方,生徒は先輩から話してもらいたい内容を事前に話し合ったり,計画や運営を自主的に行ったことによって,興味・関心を高め,積極的に先輩の体験談を聞くことができた。

 ウ 感想文と話し合い

 「先輩の体験談を聞く」を実施後,生徒が感じたことを整理させ,感想文を書かせた。その一部を紹介すると次の通りである。

 「会社では課題が与えられるので,高校時代よりも勉強する時間が多くなった」という
話にはショックを受けた。企業人としての責任の重さや厳しさを痛感させられた。企業人
として充実した生活をするためには,もっと自分を鍛えなければならないと思った。 [1]

 進学に関する生きた情報に接する機会がなかったので,先輩の話は新鮮だった。特に
「学問には未来への夢がある」と話してくれた先輩の意欲的な考えには感動した。学問を
するということば,夢と強い意志を持つことなんだと思った。              [2]

 次に,班ごとに感想文を発表し合いながら,「将来に向かって意欲的に生きるために」というテーマで話し合わせ,その結果を学級全体に紹介


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