研究紀要第90号 「個を生かす学年・学級経営に関する研究 第3年次」 -013/117page

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るが,学習面については否定的にとらえている傾向がある。
(2) M男自身が思っている自分のよさ
 1) いっでもカッとならないように,気を落ち着けていられることと,万引きなどを絶対にしないことくらいだろうと思う。
 2) いくらからかわれても,たまには反発したくなるが,気を落ち着けて耐えるようにしている。

 (3) 担任からみたM男像
 感情統制カは備わっており,耐性もあるので.特に問題はない。性格的にはやさしさもあり,協調性もある。自分にこれといった自信がないために引っ込み思案で,人前で発言したり積極的に行動することを避ける。当然,学級内での友人関係は限定され,場合によっては,いじめの対象にもなる。本人のよさを見付けだし,励まし,自信を付けさせれば積極的な発言や行動がとれるようになるだろうし,学級内での友人関係も改善されるものと考える。

 (4) 支援の方針
 1) M男の日常の生活行動の冬場面で,情意的側面に見られるよさを認め,励ましの言葉かけを継続して行い,自信を持たせる。
 2) 学級全体が,お互いのよさを知るために「いいこと見つけたカード」を継続して活用する。そこから見られるM男のよさを本人に伝え,自信を持たせる。

 3) 生徒会の行事や学級の係活動等に参加させることにより,M男のよさであるまじめさや素直さがさらに発揮され,友人からも認められるように配慮する。
 4) 人前で発表することの苦手なM男に対しては.意図的に発表の機会を与え,その都度,励ましと賞賛の言葉かけをする。

 5) 副担任や教科担任教師から情報を得て,学習面で見られるどんなよい点でも認め,自信を持たせるように努める。

(5) M男に対する担任教師からの具体的な働きかけ

 担任や級友の励ましにより,人前で話しはじめたM男

[4/13 帰りの学活1分間スピーチ]
 おどおどして,なかなか緊張して話せない。みんなシーンとして待つこと3分。ようやく話し始める。 「失敗してもいいんだから,気にしなくていいんだよ。」 と励ます。 「うまくできたね・・・。」
とみんなで拍手する。うなずいてため息をつく。
笑顔で終わったので,担任としても安心する。

[5/2 学級討議の中で班長として発表]
 発表内容を紙にまとめてあるが,なかなか思うように発表できない。はじめは下を向いたままどうしようもないという感じ。班のみんなの激励の声でようやく言葉が出てきたが,まとまりがなくなってしまった。班のみんなの「大丈夫,よくやった。」という声で安心したようだ。 「なかなか人前で話すのってむずかしいよね。」 と担任としてフォローする。 「失敗したり,うまくいかなかったりした時,学級みんなで温かい雰囲気の中でみていくことが大事だ。」 と言い,学級全体に話をする。最後は笑顔で終わる。

[5/6 学活での司会進行(日直)]
 おどおどしながら,日直の仕事である学活の司会を教壇の前に出て進める。しかし,スローテンポでなかなか言葉が出てこない。学級のみんなはシーンとして見つめている。なんとか無事に終わる。 「よくできたね。」 と,声をかける。深くため息をついたりするのが少なくなってきた。最後は,ようやく落ち着いてきたかなという感じである。

※ 4月中から5月にかけてのM男の変容についての担任の記録

<M男が人前で話さなくなった原因>
 以前に,まわりの友人からからいろいろ言われてきたので,次第に話すことができなくなったと本人は言う。元来,口数の多い子ど


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