研究紀要第90号 「個を生かす学年・学級経営に関する研究 第3年次」 -020/117page

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組んでいる様子 を知っている生徒は少なく,発表後,拍手が起こった。

・「賞賛と支援」
よさを見いだし変容したT子

・ 5月12日 家庭訪問をし,「やさしい気持ちを大切にしてはしい。」ことを伝える。 「学校は休まず,友達をたくさんつくってほしい。そのために,自分の意志をきちんと相手に伝えたり,皆が聞こえるように発表したりすることができるようになるとよい。」 と話す。

・ 5月15日 校内陸上競技大会の選手決定で誰も長距離に出たがらない中,T子に決定した。緊張した顔をしたが, 頑張るように激励をした。 「頑張ってみます。」の一言。

・ 5月22日 チャンス相談で勉強や友達について話を聞く。「勉強はつまらない。」に対して 「班活動や,行事などに積極的に取り組み,中学校生活最後の学年を悔いがないように過ごそう。」と話した。

 うなずきながら聞いていた。

・ 6月12日 丁子の学校嫌いの理由の1つに,「勉強がつまらない」がある。

 そこで,学習することの喜びを,興味を持っている英語から味わわせようと, 意図的に指名し,本文を読ませた。

「発音がすばらしい。」 とほめる。

 大変うれしそうであった。こうしたことの繰り返しが, 自信につながりその後の授業で,手を挙げるようになった。

 他教科についても, 教科担任との連携を密にしT子についての情報を交換。学習に興味を持てるよう指導と支援をお願いした。

 その結果6月下旬頃から, 「指名されての発表の声が以前より大きくなった,」「自信をもってきたようだ。」 などの情報が,各教師から寄せられるようになった。

・ 7月18日 1学期は,「遅刻や欠席がなかったこと」「あいさつなど礼儀正しかったこと」「班長として頑張ったこと」「発表などの声も大きくなったこと」などのよかった点を賞賛し,「1学期の反省」をさせた。 内容は「勉強はもう少し頑張りたい。生活面では遅刻がなかったことや,あいさつなどができるようになったこと。 学校がそんなに嫌いではなくなったこと。 1学期できなかったことを2学期にはできるようにしたい。」などを書いていた。

・ 8月31日  「友人から一言」というプリントを利用して,相互に「思っていること」を記入し,友達のよいところを発見させた。

 T子に関して, 「やさしく,いつも一生懸命」とか,「少し暗い性格だと思っていたが,明るい」 「学級の机を整理したり,花を持ってきたりして みんなのために頑張っている。」 などがあった。

 書かれていたことを,T子に伝えた。「みんなはT子さんのことを,このように思っているんだから,自信をもって行動してほしい。」 と励ます。

 T子は,「みんなの気持ちにこたえられるように頑張ります」と話した。

・ 9月18日 最近の学校生活について話をする。 「学校へは楽しい気持ちで来ている。友人関係での悩みもなく,授業も少し,楽しくなってきた。 しかし,成績がよくなく飼っている。」と担任に話した。

 学習計画,時間,学習内容,学習方法など具体的に助言した。

 学校へ来たくなかったT子が,学習へと目を向け始めたことに,確かな変容を感じさせた相談であった。

<事例を適しての考察>
 (1) 存在感を得る場としての係活動
 友達がT子の存在を認めるようになったのは,T子が係活動の新聞作りを適して,友達と積極的にかかわることができるようになったからである。この積極的な友達とのかかわりは,T子がイラストを描くのが得意という特性を生かし,「やさしく協調牲がある」というよさを友達が認め,班員と協力できたからである


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