研究紀要第90号 「個を生かす学年・学級経営に関する研究 第3年次」 -025/117page

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に認め(事例2,4),それを手がかりに励ましたり,賞賛したりして支援する。どんな小さなことでも認められることがきっかけになり,児童生徒は少しずつ心を開いてくる。

 2) よさに気付かせる
 自分のよさに気付かないでいる児童生徒に,教師や友達がよさを知らせる。そのことによって,自分のよさに気付くと同時に,教師や友達が自分のよさを認めていることが励みになって,そのよさを生かそうと活動する(事例2,4)。

 内気な児童生徒は,教師の言葉かけを待っている。教師が言葉をかける時,「お父さんのけが,直った」など,その子だけに通じる言葉をかけることが極めて有効である。この言葉かけから,児童生徒は,自分が認められていることを知り,精神的に安定し,活動が積極的になる。

 3) 自信を持たせる
 本人の活動している姿が見える場面において,教師や友達が励ましや賞賛の言葉かけを繰り返し行うこと(事例1,3,4)により,自分の行っている活動に積極的に取り組むようになる。

 また,みんなと一緒に遊べないでいる児童に,教師が積極的に働きかけることにより,みんなと遊べるようになり,自信を持って他の活動にも取り組めるようになる(事例2)。

 4) よさを伸長させる
 教師や友達の支援によって活動が持続できるようになると,他の活動にも積極的に取り組むようになる(事例3,4)。1つの活動で得た自信が他の活動にも波及し,自分のよさを一層伸長させるようになる。

 5) 学級全体で支援する
 級友が自分を認め,支援していることに気付き自ら進んで行動できるようにするため,一人一人の活動や努力の様子を,朝の会や帰りの会等で学級全体で励まし,支援する(事例1〜4)。

 また,学級便り等で知らせ,家庭や地域社会という大きな枠の中で,その子を支援する(事例2,4)。それらのことによって,その子のよさの伸長を倍加させることができる。

 6) 学級経営の中心に据える
 個を生かす教育は,これからの教育の重要な柱である。そのためには,個を生かすことを学級経営の中核に据える必要がある。この学級担任の基本姿勢が児童生徒に波及し友達を見る目を変えさせ,児童生徒同士が積極的に個のよさを見いだし合い,よさを伸長させることになる(事例1)。

(3) 個を生かす学年・学級アイディア集1日編について
 昨年度まとめた「個を生かす学年・学級経営アイディア集」を,学級担任が利用・活用できるようにするためには日常の指導や活動の中で,「いつ,どこで,何を,どのようにすればよいか」を具体的に示したのがアイディア集1日編である。
 このアイディア集1日編は.次のような意図で作成した。
・児童生徒の1日の活動の流れに沿ったものである。
・研究の手がかりとした4つの視点と児童生徒の活動に合わせた教師の支援の事例を示した。
・児童生徒の直接的な活動ではないが,教師自身や教師同士での留意事項を学年会等の欄に示した。

2 3年間のまとめ

 (1) 本研究の意義
 昭和58年中央教育審議会報告の中で「個性の伸長」,昭和60年臨時教育審議会答申で「個性重視の原則」,そして平成元年学習指導要領の改訂で「個性を生かす教育」が取り上げられ,その実現が切望され,研究・実践が進められている。

 一方,学校における学年・学級は児童生徒の生活のすべての基盤であり,主体性や社会性の育成の場,個性伸長の場でもある。そこで,これらのことを踏まえ,「一人一人の個性を生かす学年・学級経営」の充実策を追究することは価値あることであり,教育の今日的な課題の解決にこたえ得るものである。


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