研究紀要第91号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究 第1年次」 -047/117page
れた自分の「よさ」について再認識することができ.また,学習内容をもう一度振り返り,理解の深まりを確認することができる。それが次の学習への意欲付けになると考え計画した。
3) 相互評価〜「ふりかえりカード」「贈る言葉」
今回の評価方法の柱となる「自己評価」を確かめ合い,お互いを高め合うものとして相互評価を計画した。具体的な手だてとして,まず「ふりかえりカード3,4」の中で,グループでの話し合いや調べ学習,見学学習で表れる「よさ」について「友達の感心したところを書きましょう」「友達の考えでおもしろいと思ったことを書きましょう」というような項目で目を向けさせていく。そして,それらをまとめ,単元の終了時に「贈る言葉」というカードを用い.特に隣の席の友達のよいところを書き.交換させる。この段階で,「よさ」を認め合いながら,高め合いに発展していくと考えた。4) 教師からの評価〜「学習の記録」「メッセー ジカード」
教師からの評価は児童を診断する働きがあるが,今回は児童の「よさ」を総合的にとらえ.それによって自己評価を援助し,学習への意欲付けを図る手だてとして計画した。具体的には.導入追究,まとめの各段階で教師が行う「発言,ワークシート,ノートの分析」の評価を◎○△の3段階で表記し,一覧表にして「学習の記録」とした。ただし,記入の際,「○」は便宜上空白とした。その記録と,「ふりかえりカード」「贈る言葉」の内容を総合的に判断し,それを児童の「よさ」として「メッセージカード」に記入し一人一人に配る。それが,児童の自分自身の「よさ」への気付きや再認識を促し,学習への意欲を高めることになると考えた。
5 授業の実際と分析・考察
(1) 授業の実際
「明治の世の中」と「掛田の生糸」に分け,授業の様子を簡単に述べる。1) 「明治の世の中」
1860年代のヨーロッパと日本の様子をスライドやパネル写真で比較させ,「岩倉使節団」の中心人物である大久保利通がヨーロッパを初めて見た感想を予想させた。児童は「日本にもこんな文化を取り入れたい」「こんな文化の進んだ国と戦争したら負けるぞ」と大久保の立場になって考えた。これらの児童の意見を集約する形で学習課題を設定し.自分が大久保ならどのようなことを行うかを考えさせながら.調べる視点をまとめた。調べ学習は.ワークシート(「おたすけシート」)を使って行った。生活班を基本としながらも児童の友人関係を配慮してグループを編成した。
まとめでは,調べ学習をもとに.明治政府の政策の内容やその意味を考えさせ,明治政府が目指した国家像を話し合わせた。
○ 外国のような文化の進んだ国
○ 近代的で発達した国
○ 天皇を中心としてまとまった国
○ 外国と戦争しても負けない強い軍隊の国などが出された。最後に「このころ.掛田はとても大きな役割を果たしていました。どんなことでしょう?」と疑問を投げかけて授業を終了し,「掛田の生糸」に つなげた。