研究紀要第93号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第3年次」 -091/117page

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III 研究の概要
1 1・2年次の研究実践
(1) 第1年次
1) 開発的な指導援助に必要な要点を6つに押さえ,意識調査から12の基本的対応を導き出した。2) これらの要点と基本的対応の具体的な方策を探った。

<主な内容>
 開発的な指導援助とは,人間的な触れ合いを基盤に「児童生徒が自己理解を図り,自ら向上を求め,将来の見通しを意識しながら自己実現に向かって自発的に進んでいくことができる」よう指導援助することである。
 そのためには,指導援助にあたって,次の6つの要点を満たし,高めることが重要である。開発的な指導援助と6つの要点の指導援助の関係を図示すると,以下のようになる。

指導援助の関係

 開発的な指導援助についての問題点と指導援助の方向をふまえると.次のような開発的な指導援助のための12の基本的対応が考えられる。
[1] 健康の維持・増進に留意し,基本的な生活習慣を身につけさせる。

[2] 生命を尊重し,事故防止に留意させるとともに,他者への思いやりを大切にする心を育てる。

[3] 互いに認め励まし,協力して活動することによって,達成感・自己存在感をもたせる。

[4] 温かい触れ合いのある学級づくりに努める。

[5] 学校生活での規則や責任感を自覚させる。

[6] 自分への気づきと理解を図り,自分自身についての洞察を図る。

[7] 適切な「認め」によって自己尊重の気持ちを高め,肯定的な「自己像」を確立させる。

[8] 自らの価値観に基づいて,自分を信じ主体的に行動できるようにする。

[9] 自分自身を大切にすると同時に他者をも尊重する心を育てる。

[10] 自分自身にとっての目的意識を明確にさせ,将来について考えさせる。

[11] 必要に応じて,調査・検査を実施し,その結果を児童生徒一人一一人の成長のために役立てる。

[12] 家庭との連携に配慮し,児童生徒に対する理解と援助をより適切なものにする。

(2) 第2年次
1) 開発的な指導援助について意識調査を実施し実態を把握した。このことに基づいて実践案を作成し,研究協力校に提示した。

2) 実践案を研究協力校で実践し,その効果をまとめた。

<主な内容>
 第1年次にとらえた開発的な指導援助の中から意識調査の結果をふまえ,「所属と愛情」「自己理解」「自尊」「将来への向上」の4つの要点のテーマについて実践した。

 以下は研究実践による2年次のまとめである。

1) 各要点ごとの指導援助の結果,中・下位群の児童生徒に大きな変容が見られ,実践テーマの内容・方法は開発的な指導援助として効果がある。

2) 一つの要点の指導援助は,いくつかの要点の指導援助と結びついており,各要点の総合的な指導援助に配慮することが必要である。

3) 自己実現に向けて全人的な発達を促すためには,集団と個人の両面から,その関連を保ちながら指導援助を行うことが必要である。

2 3年次の研究実践(平成4年度)

(1) 第1年次,第2年次の研究からまとめられた開発的な指導援助の内容・方法に基づいて,学習活動場面での実践案を作成し実践する。

(2) 研究協力校での実践を基に,学習活動場面・特別活動等での開発的な指導援助の在り方についてまとめる。


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