研究紀要第93号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第3年次」 -093/117page
IV 研究の実践
1「所属と愛情」を高めることに中心を置いた指導援助の実践
(1) 学級の実態について
小学校4年
男子12名 女子21名 計33名
3年生で学級編成替えがあり,更に4年生で担任が変わった学級である。授業においては積極的に意見を述べる児童が多く,明るく活発な雰囲気がある。児童の多くは,互いに気の合う者同士で仲間になり,楽しく過ごしている。友達同士で助け合うこともわずかながら学校生活の中でみられるようになってきている。しかし,友達同士で意見が合わなかったり,遊びの約束が守れなかったなどささいなことで反発し合い,相手の話を聞かず孤立したり閉鎖的な行動に発展してしまうこともある。話し合い活動のとき,発言が一部の積極的な児童に片寄ってしまったり男女で反発し合ったりすることもみられる。相互のよさを認めて,共に高まり合おうとする学級経営が十分になされていなかったと思われる。
事前調査の結果によると,「所属と愛情」の次の質問肢に否定的に答えている児童が多くみられた。○ 私は学級の友達から好かれていると思う。(質問肢2)
○ 私たちの学級では,男子と女子に分かれて反発し合っている。 (質問肢12)
○ 私が学級の係活動をまじめにやっているとき,みんなは私を認めてくれる。 (質問肢13)
これらのことから,本学級においては,一人一人が安心して考えを出し合い,互いのよさを認め合い共に高まり合う場面を多く設定し,所属と愛情の意識を高める学級づくりを目指す必要がある。(2) 実践の視点
上記の学級の実態から,本学級においては12の基本的対応の中から「所属と愛憎」に関する
[3] 互いに認め励まし,協力して活動することによって,達成感・自己存在感をもたせる。
[4] 温かい触れ合いのある学級づくりに努める。を取り上げ,実践する。
また,道徳の授業実践をすることにより.「所属と愛情」の意識を高めるための一契機とする。また,語数育活動における指導を組み合わせながら「所属と愛情」の意識を高めるとともに,「安全」と「自己理解」の意識をも含めて総合的に実践する。
(3) 授業の実践
<道 徳> 飛べない蛍
1) 指導援助のねらい
ア 本時のねらい
友達同士で理解し合い,信頼し助け合おうとする心情を育てる。
イ 本研究における指導援助のねらい
授業の過程で,児童一人一人の発表や意見を互いに認め,励まし合える相互支持的な雰囲気をつくりながら,上記本時のねらいを達成する。一人一人に達成感・自己存在感を味わわせ、共に安心して考えを出し合い,支え高まり合おうとする学級づくりを目指す。2) 指導の仮説
上記のねらいを達成するために次のような指導援助をしていけば,達成感・自己存在感を味わうことができ,互いに協力し支え合う心情が育まれるであろう。
ア 役割演技による身体表現によって児童の持ち味を発揮させる。
イ 登場人物の気持ちを探っていく話し合いの過程で,発表を最後まで聴いている児童を賞賛する。ウ 役割演技をすることによって,相互の気持ちを体験的にとらえさせる。
エ 発表者の意見を肯定的に受け止め,そのよさを賞賛し,他の意見の発表を促すようにする。3) 主な指導援助
ア 児童の持ち味を発揮させる
この段階では、やっと蛍になれて夢中になって飛び回っている蛍たちの気持ちに共感させるのが