研究紀要第93号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第3年次」 -094/117page

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ねらいである。VTRの画像からイメージをふくらませ,ファンタジーの世界へ浸らせた。次々と飛び立つ蛍になり,それぞれの思いを表現させた。「うれしいなあ。」「今日からは一人前だ。」「うんと光るぞ。」と,思い思いの気持ちを表現していた。ややもすると,遊戯的になりがちなので,導入段階でのイメージづくりが大切である。グループごとの身体表現を発表し合う中で,自分と同じ気持ちや異なる表現に共感したり,発見したりしながら互いの心を通わせることができるようにした。ここでは特に次の点に重点を置いた。

○ 一人一人のイメージを充分ふくらませるための資料の提示(VTR)と場面を設定する。
○ 自分自身のイメージに基づいて自由に表現できる雰囲気づくりを工夫する。
○ 表現を発表し合い,互いの心を適わせ,それぞれのよさに気づかせる。
○ 教師の発問は,気づかせたり,引き出したり,促したり,認めたりする言葉かけに留意する。

「なるほどねぇ。いいところに気づいたね。」
「とってもうれしい気持ちがよくわかるよ。」
「かわいい蛍だね。」
「ともだちの蛍さんといろいろお話してごらん。」
「すごいなあ,びっくりしたよ。」

指導過程(一部抜粋)
図IV−1指導過程(一部抜粋)

 この段階では,飛べないでいる蛍とそれを励ます蛍たちの気持ちを役割演技によって表現させ,相互の気持ちを体験的にとらえさせるのがねらいである。特に飛べない蛍の気持ちを,日常生活の体験と重ね合わせ理解させていくことに焦点を当てる。飛ぶことのできる蛍になって,飛べない蛍へどのようにかかわるかを役割演技で表現させ,互いに教え合う活動を通して,日ごろの自分自身に気づかせようとした。特に,M男とY子の表現を中心に,集団での話し合いを深めた。

M男:なさけないなあ。ぐずぐずしているとつかまるぞ。

C男:そんなこと言ったらよけい悲しくなるよ。

M男:自分もつかまってしまうもの。

C男:え一っ,つめたいなあ。

T :M男君は,本当はとても心配しているんだよ。だから気をもんでいるんだね。

Y子:かわいそう。どうしたらいいのかなあ。

A子:どうしたらいいのか教えてやればいいのに。

T :Y子さんは,一緒になって考えようとしているんだよ。やさしいんだね。

 このように,ここでは特に次の指導援助に重点を置いた。


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