研究紀要第93号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第3年次」 -095/117page
○ 一人一人の発言を大切に取り上げ言葉に込められた気持ちを互いに受容できるようにする。
○ 役割演技を通して,日常の自分自身の言動に気づかせる。
○ お互いの演技を肯定的に受け止め合い,そうせざるを得なかった気持ちに共感できるようにする。4) 授業実践についての考案
ア 児童の持ち味を発揮させる
イメージ深化による身体表現は,一人一人の思いを身体を通して表すという点で,言葉による表現に抵抗のある児童にとっても効果的であると同時に,相互の心を開かせる場として有効であると考える。身体表現に込められる気持ちを,互いに受け止め,「…のようにしたい」と思っているのだね,と動きの中から言葉を見つける活動へと発展した。発言の少ないY子にとっても適切な手立てだったと考える。イ 意見を肯定的に受け止め,互いのよさに気づかせる
M男の発言は時として乱暴に聞こえ,受け入れられない傾向がある。しかし,表現に込められる思いを肯定的に受け止めることにより,普段気づかずにいたM男のよさに気づくことができた。こうした受容が相互の受容を高め,意欲を盛り上げたと考える。ウ 役割演技により,自分自身に気づかせる 飛べない蛍や飛べる螢を自由に表現する活動では,演技に表れる気持ちを大切にした。
「困ったなあ,どうしよう。」「いっしょうけんめい練習すればきっととべる。」「ぐずぐずしているからとべないのさ。」「かわいそうに,どうしたらいいの。」等,一人一人の表現から,その子自身の気持ちを互いに読み取り,「あっ,そういえば,自分にそっくりだ。」などのように気づくことができたと思う。5) 他の教育活動における実践
肯定的に受け止めることを授業以外の日常の教育活動の中で大切にしながら援助に努めた。否定的に見られがちだったM男に対しても児童たちの見方が変わった。イラスト好きなM男の絵が加虐的なものから温和な夢と希望にあふれるものへと変わった。イラストのコーナーにはいつもM男の絵があり,友人たちの興味を引いている。Y子は日記を通して対話するようになり,心を