研究紀要第93号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第3年次」 -096/117page
開こうとしている。友達も増えつつある。
(4) 実践の考察
1) 学級の変容について
事前調査によると,特に「所属と愛情」,及び「所属と愛情」の各質問肢の2,12,13が低いことがわかる。つまり自己存在感や達成感を味わわせるための援助が特に必要であると考えられる。そのためには,教師と児童及び児童相互の受容を主体とした学級経営が望まれる。
道徳の授業の実践を契機として,特に次のような指導援助を継続した。
ア ー人一人の考え方,感じ方には違いがあり,それぞれの違いを受け止め認め合うことを大切にする。
イ 相手の話を最後までよく聞き,相互理解に努める。
ウ 係活動や班活動を大切にし,協力し合いながら責任を持って仕事を進める。
エ 「きっとできる」「必ずよくなる」ことを期待し合う。以上の指導援助により,学級が次のように変わりつつある。
ア 特定の児童の意見に左右されがちだったが,それぞれが自由に発表するようになった。
イ 自分の仕事に意欲的に取り組む姿が見られる。
ウ 口論が少なくなり,相手の意見に耳を傾けるようになってきた。
エ 学級全体が落ち着きを見せ,明るい雰囲気に変わってきている。事後の調査桔果をみると「所属と愛情」が事前よりは高まっていると同時に,「健康」「安全」や「自己理解」も良い方向へ変わっている。特に「所属と愛情」の2,12,13の質問肢が高くなった。相互受容を基盤にした学級づくりが,一人一人の存在感を高め,相互主体性が育まれつつあると考える。
2) 個人の変容について(M男,Y子の例)
M男は問題行動が多く,学級では孤立状態にあった。わざと乱暴な発言をしたり,混乱させたりして悦に入っている様子が見られた。道徳の授業での役割演技にもその気持ちが表れた。「バカな奴だ。早くしろ。つかまるぞ。」という表現は,みんなと違う言い方をしてみせ,学級の様子をう