研究紀要第93号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第3年次」 -103/117page

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しながら実践を進めていく。
 実践の方法としては,本時では理科の授業を通して実施するが,特別活動,教育相談などと組み合わせた指導構想のもとに実践することにした。

(3) 授業の実践

  <理 科> 生物のからだと細胞
1) 指導援助のねらい
ア 本時のねらい
 肺の模型を製作し積極的な話し合い活動を適して肺がどのようにして動くのかを考えさせる。

イ 本研究における指導援助のねらい
○ 肺の模型を各自製作し,製作過程の中で肺のしくみについて十分理解させ,はたらきについて自分の考えを持たせる。さらに,発表し合う活動を通して自分なりの考えを掘り下げながら学習を主体的に展開させる。
○ 意見交換や実験での協力はペア(二人一組)で行ない,課題の解決に向け互いによく話し合うことにより,学習の遅れがちな生徒にも「やればできる。」という意識を持たせる。

2) 指導の仮説
 指導援助のねらいを達成するために,下記の実践をすれば,自信を持って主体的に行動するとともに他者への尊敬も高まっていくであろう。

ア 身近な材料を用いた教材を各自に作らせ,興味・関心を持たせながら,のびのびと実験や観察に取り組ませる。

イ 考えを深化させるために二人一組の「ペア学習」を進めさせる。自分の意見を自信を持って相手に伝え,相手の意見を真剣に聴きながらペアでひとつの考えをまとめさせ,全体へ発表させる。

ウ 相手の意見を尊重し共に高め合う雰囲気を作っていくために,たとえ誤答であっても教師は生徒の考えを大切にし意欲や努力を認め励ます。

3) 主な指導援助
ア 主体的行動を促す
クラスの理科係は,家庭生活で出る空容器などを持ち寄った。一人一人行きわたる分を準備するのは大変なので理科係がクラスに協力を求めた。係に応じる生徒が多数いて作業は比較的スムーズに終了した。教師の手で規格の物を簡単に準備するのとは違い,生徒たちが集めた用具なので生徒自身大切に扱っていた。生徒は,興味を持ち積極的に活動した。教師は,自主的に行動した係や係からの呼びかけに気持ちよくこたえた生徒たちをはめた。

 前時の授業「肺動脈について」の復習をする。質問に対して,全員が意欲的に挙手をする。教師は意図的に学力の中位または下位の生徒を中心に指名する。ある生徒は,教師から質問され自信なげではあったが正答することができた。

 「○○君,よく復習してきたね。」と賞賛され本人は照れながらも級友の温かい拍手を受けていた。また,ある生徒には教師が「○○さん,この問題は自信があるかな。」と指名する。生徒は自信たっぶりに答えた。教師が「正解です,ずいぶん勉強してきたんだね。」と言うと生徒は目を輝かせて満足げであった。

 教師の一言一言に生徒が反応し,賞賛や励ましの言葉に充足した気持ちに浸っていた。

 「さて,今日の授業だがみんなできるかな。」という教師の言葉かけに生徒たちは大きくうなずいた。実験の準備に取りかかる,教師の指示で係が率先して動く。各生徒に実験の用具が配り終る。

 教師は,一人一人の準備の状況や係活動の様子を確認しながら助言を与えていた。そこには,係の生徒への「君のおかげできちんと準備ができたよ。ありがとう。」とねぎらいの言葉かけもあった。生徒たちは自分に渡った実験用具の点検を終了し,次の教師の指示を待ち切れない様子でいた。

イ 活動意欲を高める
 肺の運動のしくみについては,教科書の人体図を見せ,自分の体の構造を考えさせながら師の模型を作らせる。ゴム膜・ガラス管・ペットボトルの底を切ったもの・ゴム風船・ゴム栓・セローテープ・タコ糸を目の前に置きながら試行錯誤の開始である。

 教師は,ゆったりとした口調で言い聞かせるように「肺をゴム風船だとすると,どんなふうにすればゴム風船は膨らんだり収縮したりするか考え


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