研究紀要第93号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第3年次」 -104/117page
よう。」「自分の体に照らし合わせて,作ってみよう。」と指示し時間の目安を知らせてから,生徒全体の活動を把握するため机間指導に移った。
しばらくすると生徒たちの行動は急に活発になり,理科室は生徒たちの話し声で満ちていった。
「これ,何に使うのかな?」「できた。できた。」「どうやるのかなあ?」「ゴム膜どこに使うんだろう?」「空気がもれてしまうな。」「どれ!」「うまくついたぞ!」「先生,できました!」
完成した模型を見て喜ぶ生徒たちウ 他者をも尊重する気持ちを高める
(図IV−13指導過程の太枠参照)生徒たちは完成までの時間に多少個人差があったが肺の模型を完成させた。自分の模型であるのでダイナミックな動かし方をしており,ある生徒は,ペットボトルをわしづかみにして押したり離したりしていたが,驚いたように「先生!ゴム風船が大きく動いている。」と叫んだ。周囲の生徒たちも,その声に振り向き「なんだろう。」と注目した。教師は,「すごい動きだね,すばらしいところに気がついたね。」「もっと別なところでもゴム風船が動くところないかな。」と,賞賛と示唆を与えた。
すると生徒は,別の答を求めて考え始めた。あるペアにおいては,「振ってみるか。」「できるかな。」「やっぱりできないや。」「う〜ん残念。」「でも次考えてみよう。」二人で真剣に考え悩んでいる。前向きに実験に取り組む二人に教師がニコエコしながら話しかけていった。二人の生徒は教師の話に大きくうなずき,また,実験用具に向かった。すると,何か発見できたのか二人でまた大きくうなずいた。嬉しそうにしている二人を教師は遠くから見守っていた。
エ 賞賛を与える
机間指導も終了しまとめの時間になると生徒たちの話し合いのボルテージも上がってきた。
教師は鉛筆を置かせまとめの発表を全体に呼びかけた。すると下位に属する2名の生徒が挙手した。教師はすかさずA男を指名し,A男は意見を発表した。発表終了と同時に大きな拍手が理料室に響いた。A男は照れながらも嬉しそうであった。教師が「それでは,A男君の言ったとおりにやってみましょう。」と言うと「うん!動く。」と生徒たちはうなずきながら確かめていた。A男は,学級の中でも目立つこともなく意見もはっきりと
図IV−13 指導過程(一部抜粋)