研究紀要第93号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第3年次」 -110/117page
上」で良い方向に変容していた。A子に学習を教えた二人にとって,教えたり助けたりしたことが自分自身の将来への向上への意欲を高める結果となったと思われる。
図IV−21 B子の6要点の変容
B子は,成績は上位ながら,学習面では受身な態度が目についた。個別面談では,将来進学したいという希望であったので,おおいにほめ,問題集の指示もした。その後,積極的に問題集にも取り組むようになり,放課後,わからないところを聞きに来たり,授業態度においても意欲的に取り組むように変わった。
調査結果では,図のように「自尊」と「将来への向上」が大きく伸び,他の4つの要点でもすべて向上が見られた。
3) 教師自身の変容について
生徒に対して認めたり励ましたりする言葉かけを多くすることは,一人一人の生徒を十分理解していないと難しいものである。日ごろから授業以外でも生徒とかかわる場面を多くし,人間関係を深めておくことが大切であることを痛感した。また,教科内容を理解させることで,生徒の学習意欲を高めることが認識できた。これまでは,生徒はテストとか進路のためとか必要に迫られる形でしか,勉強しようとはしないものだと思っていただけに,教師自身の考えを変えさせられた。
さらに,生徒間の人間関係を改善し,集団でのかかわり合いの中で活動させることは,互いに認め合ったり励まし合ったりするうえで,その教育的効果はきわめて高いと感じられた。
5 「将来への向上」の意欲を高めることに中心を置いた指導援助の実践
(1)学級の実態
中学校2年
男子18名 女子21名 計39名2年生になってクラス替えがあり,新たな気持ちで,より自分を向上させて充実した学校生活を送ることができるよう,それぞれの生徒が生活目標を立ててスタートした。
学級は,陽気で活発な生徒が多く,男女の仲も良い。また,気兼ねなく自分の意見を発表できる明るい雰囲気である。しかし,個々の生徒をよく見ると,感情のままの言動が多く責任感の乏しい生徒が目立つ。また,学習用具の忘れ物や遅刻者が多いことなど規範意識が低く,学校生活に対する目的意識や将来への志向性が不十分な面が見られる。
そこで,中学生活も半ばとなり,「将来への自己像」の確立を援助する時期と考え,「将来への向上」に関する意識調査を実施した。その結果,次の質問肢に否定的な回答が多く見られた。
○ 身近な人と自分の将来の希望について相談している。 (質問肢2)
○ 将来の職業(仕事)について考えている。 (質問肢3)
○ 情報化社会(コンピュータなど)といわれている今の社会に関心を持っている。(質問肢9)
これらのことから,学級全体の「将来への向上の意識」が低いと言える。
(2)実践の視点
上記のような実態から,本学級では,12の基本的対応の中から,「将来への向上」に関する
を取り上げ,「目標に向かって努力しよう」とする意欲づけを図る指導援助の実践を進める。
[10] 自分自身にとっての目的意識を明確にさせ,将来について考えさせる。
[11] 必要に応じて,調査・検査を実施し,その結果を児童生徒一人一人の成長のために役立てる。