研究紀要第93号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第3年次」 -112/117page
なりたい。」
将来の希望についてあまり関心を示さなかったN男であったが,個別教育相談によって希望する職業を持つことができた。
作文「私の希望」発表指名されるとN男は,堂々と作文を読みあげることができた。読み終わるとN男の隣の女子が,「N男君,やったね。」と笑顔で声をかけた。生徒たちも一段と大きな拍手を送った。N男は満足そうな表情を見せた。
次に,事前に数名の生徒にまとめさせた希望する職業のアンケート集計表を提示し,係の生徒に発表させた。生徒たちは,25種類もの職業が提示されたことに,驚きの声を上げた。
ウ 今後の生活に対しての意欲を高める
希望の実現に向かって,性格,行動面での努力点,改善点について気づき,今後の生活に対しての意欲を高めることがねらいである。また,努力点,改善点に気づかないでいる生徒に対しては,良い面を認めながら,個別に助言する。まず,希望する職業に就くために必要な適性,資格などを書き込んだプリントをもとに,自分の特徴を振り返らせた。その後,看護婦さんになる場合を例として提示した。その例を参考にして,各自,学習プリントに努力点,改善点を書き始めた。教師は机間指導をし,適切なアドバイスをした。鉛筆を持ったまま,考え込んでしまったN男に対しては,次のように助言した。
T :ツアーコンダクターになるためには,どんな点をがんばったらいいだろうね。
N男:(少し考えて)英語ができないとだめかなあ。でも,僕は英語ができないからなあ。
T :君は努力家だからきっとできるよ。
N男:そうですか。地理の勉強もしなくては。
T :さすがN男君。いい点に気がついたねえ。先生もそう思うよ。もっとあるようだね。
N男:人に親切にすることも必要だと思います。
T :なるほど。とても大切なことだねえ。
N男は,いつも親切に教えてくれる隣の席のA子に漢字などを聞きながら書いた。
図IV−23 指導過程(一部抜粋)