研究紀要第93号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第3年次」 -113/117page
生徒たちは,集中して取り組み.全員が学習プリントにまとめることができた。
次に,努力点,改善点について,TPシートに書かせ.それぞれの生徒の発表を聞いた。Y男:僕は役場に勤めたいと思っています。そのためには,今まであまり本気でやらなかった奉仕作業にまじめに取り組みます。
N男:今までは,友達にいやみを言うことが多かったが,ツアーコンダクターは人を大切にする仕事なので,愛想よくしたいと思います。
S子:私は将来「保母さん」になりたいので,次のような点に努力したいと考えました。
S子の発表(TPシート)T :人を思いやって生活することはとても大切なことです。たいへんすばらしいことに気づきましたね。 発表の後,更に友達の発表を聞いて気づいた点について書き加えることができた。
学習プリントに努力点・改善点を記入4) 授業実践についての考察
ア 職業に対する関心を高めさせる。
作文「私の希望」の発表に対して,生徒たちは真剣に聞き,その希望をすばらしいと思ったことが,大きな拍手と感想からとらえられた。また,職業のアンケート集計表の提示により,希望する職業の多様さに「えっ,こんなにあるの?」「みんな将来のことを考えているんだ!」という驚きが見られ,自分もがんばっていこうとする気持ちが,全生徒の表情から感じられた。
イ 希望する職業に就くために必要な努力点,改善点に気づき,今後の生活に対しての意欲を高める。
希望する職業に就くために必要な適性や資格を確認し,自分の性格や行動面と照らし合わせながら,努力点,改善点を学習プリントに書くことができた。TPシートを使った発表内容からも,自分への気づきと将来への意欲の高まりが認められた。発表を聞いた生徒は,更に自分の気づきを深めたことが,学習プリントに書き加えている姿からとらえることができた。
ウ 気づくことが遅い生徒に対して,個別に助言し,気づかせる。
学習プリントに記入しているときに,机問指導を行い,個別に助言し.気づかせるようにしたことは効果があった。特に,T男については,認め励ましながら助言したことにより,自分の希望を持っことができた。その発表に対して級友の温かい拍手が送られたことにより,更に将来への意欲が高まりつつあることが,積極的な学習の様子から考えられる。
5) 他の教育活動における実践
生徒間でも,お互いに相手の立場を尊重する態度が見られるようになり,校内合唱コンクール,校内球技大会,学校祭での山車作りなどで,学級全体で協力して意欲的に取り組む姿が見られた。
特にはっきりした希望する職業を持っことができない生徒や,自己理解の低い生徒を中心に,余暇の時間を利用して,個別による教育相談を行った。その桔架,それぞれの生徒が考えを深めることができた。三者面談の中でも,「希望する職業」について取り上げたところ,生徒たちの問でも進路に関する話題が,多く聞かれるようになった。