平成5年度 研究紀要 Vol.23 -093/162page

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理科におけるマルチメディア教材の開発とその活用

長期研究員  唐 木 義 則

I 研究の趣旨

 通常CAIを中心に、コンピュータを利用した学習の流れは、階層構造によって構成されている。

 つまり、学習のねらいを達成するため下位目標を設定する。さらにその下位目標を達成するために、その下位目標を行動として表し、学習すべき項目を配列する。そして、論理の展開順に従い、学習を展開する。

 したがって、学習者は、この階層構造順に学習を進めることになる。

 ところが、人間がある問題を解決するための思考の過程は、常に階層構造に従った経路をたどるとは限らない。一見何の関係もない事柄を思いつき、それをきっかけに思考が発展し、解決への道が開かれることもある。

 この場合、思考の過程は階層構造でなく下図に示すような非階層構造的である。(図一1)

図一1(芦葉浪久1991年)
図一1(芦葉浪久1991年)


 これは、課題解決に必要な情報が含まれているある資料(ノード)の中の情報Aと、異なるノードに含まれる情報Cとを関連(リンク)させて思考し、課題を解決するということである。

 つまり、学習者が、課題を解決するために、様々な資料を本棚から引き出し、情報と情報を結び付けて思考する様子に似ている。

 学習の場合も、既学習事項のある事柄が気になり、階層構造の学習の流れからすると、横道にそれた学習が必要になってくる場合がある。

 そこで、課題解決のために、さまざまな情報や事象が相互に関連し合い、非階層構造的にも学習できる教材を開発することにした。

 開発に際しては、教師が今までに作成した資料や新聞のスクラップ、学校や図書館等に蓄えられている文字資料や写真資料、図表、映像資料などを総合的に活用し、同一のメディア(コンピュータ)で統合し、提示することができる教材(マルチメディア教材)を開発しようと考えた。

 また、活用に当たってはマルチメディアの持つ映像や音声の簡便な入カ・編集機能を利用し「生徒のコンピュータリテラシー領域の使い手としての能力の一つである『発信力』や作り手としての能カの一つである『創作力』を高める」といった活用方法を、実践的に明らかにしようと考えた。


II 研究のねらい

 資料から得られる様々な情報を、生徒の興味・関心に応じて検索しながら、自ら課題を解決していくことができるようなマルチメディア教材の開発を通して、今まであまり、教育現場では開発が進んでいない非階層構造的な教材のコンピュータによる開発方法、活用の在り方、開発教材の有効性を明らかにする。


III 研究内容と研究計画

 教材を開発しようとする単元は、中学校理科の第2分野で、大単元「大地の変化と地球」の中の「地球と人間」である。この単元の目標の一つは、


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