平成5年度 研究紀要 Vol.23 -094/162page
「生物とそれを取り巻く自然の事物・現象に対する関心を高め、意欲的に自然を調べる活動を行わせるとともに、これらを通して自然環境を保全し、生命を尊重する態度を育てる」ことにある。
学習内容は、「他の惑星との比較を通して、地球には生物の生存を支える様々な環境要因がそろっていることを認識すること」「人間が利用している資源やエネルギーには、天然資源、水力、火力、原子力などがあることについての認識を深めること」「目然の開発や利用に当たっては、自然界のつり合いを考えたり自然の保存や調整を行ったりするなど、自然環境を保全することの重要性について認識すること」である。
そこで、生徒一人一人が人間の生存の場としての地球と地球環境について関心を高め、地球環境や自然環境保全など総合的に考察することができるような教材を開発すること。また、生徒にマルチメディアで表現活動を行わせ、積極的に身近な環境を調べようとしたり、環境問題に関心を持ち、環境の保全に取り組もうとしたりする意識を高めさせることをねらいとし、以下の2点から研究することにした。
1 マルチメディア教材開発の考え方や方法の研究
生徒一人一人の興味・関心に応じた教材の開発における、開発の考え方や開発の方法を明らかにする。
2 開発教材の活用の在り方と有効性
生徒の課題設定や課題解決、表現活動にマルチメディアをどのように活用できるかを探るとともに、活用を通して教材の有効性を考察する。
IV 研究の概要
1 マルチメディア教材開発の考え方や方法の研究
(1)開発の考え方
今回の開発に当たっては「考え方」のよりどころを、E・Dガニエ著、赤堀侃司(東京工業大学教育工学開発センター助教授)監訳「学習指導と認知心理学」に置いた。赤堀助教授は、平成2年10月に発刊された「ハイパーメディアによる教材開発」(財団法人:日本教材文化研究財団)の中で、「物の見方、認識の仕方は、その人の過去の学習履歴に依存している。専門家と初心者で比較してみると、専門家は法則や原理を中心に、種々の概念関係を認識するのに対して、初心者は、表層的な、たとえぱ形状や類似性の関係によって認識するという違いである。」と述べている。
このことは、初心者が、新たな概念を形成する場合、専門家のように様々な法則や原理、事象を非階層構造的に関連させれば、思考を深めることができるということである。したがって、学習者の興味・関心や認識、学習歴の違いなどによって、学習者自身に非階層構造的にリンクを任せられるマルチメディア教材を開発できれば、生徒一人一人の興味・関心に応じ、自ら課題解決する学習の展開が期待できると考えた。
また、教材を作成するに当たっては、大阪大学教授、水越敏行氏によって発見学習の中で開発された「学習者の発想や連想を生かしながら、教師の意図を反映させる方法」(「思考のモデル」と呼ばれている)の考えを参考にした。
これは、学習者の思考過程を、教師が予測し推測して、授業の流れを決める方法である。
学習者の思考や連想をできるだけ反映させ、あたかも学習者自らが考えて、ある概念にたどりついたと思えるような学習方式を指向している。
この考え方を応用することによって、
○生徒一人一人の興味・関心を知ることによって、興味・関心に応じた教材が作成できる。
○生徒の考えや連想の中心になっている事象を知ることにより、事象と事象の結合(リンク)を考慮した、非階層構造的な教材を作成することができる。