研究紀要第95号 「児童生徒の創造性を高めるための教材開発」 -048/162page
「シミュレーションによる昆虫の学習」 1 単元名「こん虫のからだをしらぺよう」(第3学年)
2 教材のねらい
いろいろな種類の昆虫を観察したり、からだを分解して調べたりすることは、昆虫の確保の面や生命尊重の面からも難しい。また、分解した昆虫のからだを組み立てながらからだのつくりを学習するようなことは、実物では非常に困難である。
本教材は、このような点をパソコンによるシミュレーションを用いて行えるようにした。
作成は、以下の視点に沿って行った。
・シミュレーションを体験することで、その後の直接体験への興味・関心、意欲が高められるものであること。
・問題点の認識や問題解決のための直感力が養えるものであること。
・児童自らが主体的にパソコンに働きかけ、思考、判断、表現できるものであること。3 教材の概要
基本的には、以下に示す3つのコースから構成されており、各コースともイメージスキャナーで取り込んだ画像を中心としたデータで編集されている。
そして、全画面すべてマウスの左ポタンを押す(クリック)だけ、という簡単な操作で学習を進めることができるので、操作に慣れていない児童でも十分に活用できる。
(1)「探す」コース
表示された森林の写真(写真1)の中に隠された7種類の昆虫をマウスを使って探し出すものである。昆虫を見つけるとその昆虫の生態について学習できる画面に展開していく。例えばアリを見つけると、アリの食生活やアリの巣の画面へ進むという具合である。さらに、その画面の中で「ここは何かな。」と疑問を感じたところでマウスをクリックすると、その説明が提示される。このように、1つの画面の中に複数の別画面(情報)が隠されており、児童が画面に働きかけることにより、この情報が提示される。
このようにして、7種類の昆虫すべてを探し出すと、このコースが終了する。
(2)「つくる」コース
このコースは、パソコンの画像処理によって、各部分に分解された昆虫のからだ(写真2)を組み立てて、完成させていくものである。
最初に完成させたい昆虫を選択し、あし、頭、胸、腹の順に選ぶと、パソコンが自動的に組み立てて表示してくれる。この作業は、目的の昆虫が完成するまで、何度でも行うことができる。
日ごろよく見る昆虫のからだも、各部分だけ表示されると意外と戸惑うものであり、この試行錯誤の過程で、実在しない昆虫がつくられることもある。このとき、児童にその昆虫のからだから想像できる生活の様子を考えさせれぱ、からだの仕組みと生活環境とのかかわりについて、さらに思考を発展させることができる。
このコースの学習を通して、昆虫のからだに対する観祭の視点や注意力、そして科学的思考力が培われていくものと思われる。