研究紀要第96号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -068/162page

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わかる。

 このことは、個々の生徒の身体的な健康状態にも関係するが、学校生活に対して「不安や不適応意識」をもっている生徒のいることを表していると考えられる。

オ 3-1 (学校がいやで学校を休むことがありますか) では、「多い」「時々」を合わせると6.8%である。これは「学校を休むことがある」という具体的な形で学校不適応状態が表れているものだが、他の調査項目と比べると割合は小さい。

カ 3-4 (学級がいやで保健室に行くことがありますか) では、「多い」「時々」を合わせると5.0%で、「保健室を利用する」という形で不適応状態を表している割合は小さいことが分かる。

 このことから、3-2,3-5などの「健康に不安のある状態」「学校不適応状態」を表している生徒がいるにもかかわらず、「保健室を利用する生徒」は多くないことがわかる。

 以上から、「学校を休むことがある」「遅刻や早退をする」のように具体的な学校不適応行動として表れている生徒よりも、「意欲がない」「心理的に不安だ」「好ましい人間関係をつくることができずに悩む」などのように 具体的な行動に表れない不適応状態を示している生徒の割合が大きいことがさかる。

 このことは、具体的な不適応行動が見られず、 一見、学校生活に適応できていると思われる生徒の中にも、不適応状態にあって悩んでいる生徒がいるということを示しているものと考えられる。  一方、教師側の学校不適応の把握という点からは、 「ぼんやりしている」「いらいらしている」「いじめられたり、無視されたりして悩む」状態をどのように的確に把握し、指導援助するかが大きな問題であるといえる。

2.男女別に見ると

 学校不適応の状態の程度を男女別に見ると、それぞれの調査項目に「多い」「時々」と答えた割合には、わずかな差は見られるが、男女共にほぼ同じような傾向を持っていることがわかる。ここでは特に男女差の顕著な項目を取り上げ、男女それぞれの特徴について述べる。

学校不適応状態(男女別)
学校不適応状態(男女別)


ア 3-3 (遅刻や早退をしますか) では、「多い」「時々」を合わせると、男子29.6%、女子24.3%で、「遅刻や早退をする」状態が男子に多いことがわかる。このことは、「遅刻や早退」のように学校不適応状態が行動化して表れる傾向は、男子に多いということを示していると考えられる。

 3-1でも「学校を休むことがある」と答えた割合は男子1.8%、女子0.5%であることから、同じような傾向がうかがえる。

イ 3-8 (いじめられたり、無視されたりすることで悩むことはありますか) では、「多い」「時々」を合わせると、男子24.6%、女子34.9%で、「いじめられたり、無視されたりすることで悩む」という状態は女子に多いことがわかる。このことから、男子よりも女子に学級や部活動における「友人関係」での悩みが深いという傾向にあることが考えられる。

 以上から、男子には学校不適応状態が「遅刻・早退・欠席」などの行動として現れる傾向が強いことがわかる。一方、女子生徒は学校不適応状態にありながらも、その悩みを行動に移すことが少なく、教師はその実態を的確に把握することが難しいと考えられる。


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