研究紀要第96号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -079/162page
この質問肢で見てみると、「とても」と回答した割合は、C群が72.3%、B群が69.7%、A群が59.4%となっている。他の質問肢においても同様の結果となっている。このことから、 学校に適応した状態にある生徒ほど困難に対して自分で解決しようとする気持ちが強い ことがわかる。
工.「先生に援助してほしい」について、3つの群を比較すると、多少、A群が高くなっている傾向が読み取れる。
【どのくらい先生に援助してほしいか】
この質問肢で見てみると、「とても」と回答した割合は、A群が8.4%、B群が5.4%、C群が3.4%となっている。このことから、学校不適応状態にある生徒は、先生への援助を求める気持ちが、他の群の生徒より高いことが読み取れる。
3.まとめ
<場面・理由について>
ア 12の場面について、A群、B群、C群を比較すると、すべての場面で、学校生活に適応していない状態にあるA群が「学校に行きたくない」という感情を持ちやすいという結果が出ている。
このことから学校生活に適応している生徒は、学校生活にさまざまな問題が起きたとしても、そのことがただちに「学校に行きたくない」という気持ちにつながることは少ないと言える。
イ 大きく質問項目別に見ていくと、 友人関係について円滑にいかないときに、学校へ行きたくない気持ちを持ちやすい 結果となっている。この傾向は、不適応状態を示す割合が大きい生徒ばかりでなく、現在学校生活に適応した状態あると思われる生徒においても高い結果となっており、学校不適応の最も大きな要因となる点であろう。
次に、学業や進路に関しては、進路の問題が満足のいくような結果になりえないとき学校に行きたくない気持ちになりやすい。その原因は、学習内容が理解できないことからくるものではない。進路の問題は、学業の問題というより、「将来のあり方・生き方の問題」として対応するべきことと考えられる。
ウ この他には、質問肢別に見ると、「性格」に関する劣等感の方が、「体型」に関する劣等感より高い割合で、学校に行きたくない気持ちにつながっている。このことは、中学生という発達段階からみて外見的なものよりも内面的なものに目を向けている時期の特徴として考えられる。
また、「毎日の生活でやりたいことが見つからない」も低い方とはいえ、約30%という結果になっている。最近は学校不適応問題の中に、無気力なタイプが増えていることを裏づけている。
<解決方法について>
一般に、生徒からすれば、先生に対する印象としては、悩みに関しての相談相手というよりも、「勉強を教えてくれる人・進路の相談にのってくれる人」であって、進路や学業問題での援助を求めている傾向が強いことがわかる。それ以外については、学校生活に適応している状態が大きいかどうかにかかわらず、「自分で解決しよう」という気持ちが、強いことがわかる。
場面・理由に関する結果からもわかるように、不適応状態を示す割合の大きい生徒においては、いろいろな場面で「学校に行きたくない」気持ちを持ちやすい。その一方で「自分で解決したい」という気持ちも高く、 何とかしようとあがきながら もうまく解決されず学校不適応意識につながっている ように思われる。
教師の立場で見逃してはならないのは、 不適応状態を示す割合の大きいほど、先生に対する依存度が高い 点である。学校生活に適応するためには、生徒だけの力では困難な状況にあり、教師の援助が求められていることがうかがえる。このような生徒の気持ちに目を向けていくことの重要性が感じられる。