研究紀要第96号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -081/162page
でいる活動の場があるか、もしくは学校生活の中での活動の場を求めているかのいずれかであると思われる。
また「人間関係」に価値を見いだしているということは、快適な人間関係を体験しており、そのことを大切にしたい状態か、または信頼できる人 間関係を求めて学校生活を送っていることを示しているといえよう。
ウ 逆に、「成績・能力」はA群とC群の差は少ない。このことから、学業成績や将来の社会的成功に価値を見いだしているかどうかは、学校生活への適応とは関係が薄いといえよう。
2.男女別のA群・B群・C群の比較
<男子>
<女子>
ア C群男子を見ると、6つの価値尺度のすべてで平均を上回っている。特に「校内活動」の高さが目立つ。これは、学校生活の中でやりたいことを持っている生徒が、学校生活に適応している状態にあることを示している。
また「対人交流」において他との差が大きく、 C群男子は、他者との積極的な交流の中で、 諸活動に取り組むことに価値を見いだしている ことがうかがえる。このことが、学校生活に適応している状態にあるC群男子の特徴といえよう。
イ A群男子 は、「成績・能力」を除き他のすべての価値尺度で、平均を大きく下回っている。特に、「理想的自己像」や「対人交流」の価値尺度で、他との差が大きい。
これは、 他者との交流の中で自分を理想的な姿に高めようとする意識の低さを現している。 男子の不適応状態の顕著な生徒の特徴として指摘できよう。
ウ 男子においては、「成績・能力」はA群・B群・C群の差がほとんど見られない。 男子の特徴として、学業成績や将来の社会的成功に価値を見いだしていることと、学校生活に適応していることとは、あまり関係がない ことを示している。
このことは、男子の場合、学校不適応の状態の顕著な生徒においても、これらの価値を重要だと認識していることとして理解できよう。
工 C群女子はすべての価値尺度で高い価値観を持っていることが目立つ。 特に「理想的自己像」や「対人交流」の項目では、他との差が大きい。
これは、他者との交流の中で、自分を理想的な姿に高めようとする意識の現れであろう。このことが、学校生活に適応している状態にある女子の特徴といえよう。
オ A群女子 は「理想的自己像」や「対人交流」の価値尺度では平均を上回っているものの、「成績・能力」と「校内活動」では、平均を大きく下回っている。
このことから、 学業成績や将来の社会的地位などに無関心で学校生活の中でもやりたいことを見つけていない 様子がうかがえる。女子の不適応状態の顕著な生徒の特徴として指摘できる。
カ 男子と比較すると女子の方が「成績・能力」でのA群・B群・C群の差がはっきりしている。
このことは、 女子において学業成績や将来のことに関心が薄い場合、男子よりも学校不適応の状態に陥りやすい ことを示していると考えられる。