研究紀要第96号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -083/162page

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「成績・能力」「社会的規範」「校内活動」「他者からの承認」の4つの価値尺度で、最も高くなっている。それだけ学校生活にも多様な価値を見いだしているといえよう。

 他の「理想的自己像」「対人交流」については学年が高いほど、価値を見いだしている。これは男子の場合と同様、やはり自分の内面に意識が向いていることを示している。

5.まとめ

ア  多様な価値観を持っていることが、学校生活への適用に結びつく

 一般に、学校に適応している状態にあるC群の方が、不適応状態にあると思われるA群と比較してみたとき、多くの価値尺度で高くなっている。このことは、学校に適応している状態にある生徒ほど、学校生活のさまざまな側面に価値を見いだしていると言える。

 言い換えれば、「学校」への意味づけの多様性が個人の心の柔軟性を高め、心理的適応の幅を広げていることが考えられる。

イ  男女を比較すると、価値観が異なる

<男女別の比較>
<男女別の比較>

 全体を比較してみると「成績・能力」の価値尺度では男子が高いものの、その他の価値尺度ではすべて女子が高くなっている。特に、「理想的自己像」や「対人交流」での男女差が目立つ。「校内活動」では、あまり差はない。

ウ  発達段階からみて、思春期の発達課題に取り組んでいる様子が、価値観を見てもわかる

  1年生は、「成績・能カ」と「校内活動」が高く、学習活動や校内の諸活動など、とにかく学校 内での表面的な活動を望んでいる。また、「社会的規範」や「他者からの承認」が高く、このような活動の欲求は、本当に自分の中から湧いてきたものではなく、社会的な常識に従って行動していたり、周囲から認められたいと考えているものであり、外的な価値判断を取り入れてのものであると考えられる。

 このような1年生と比較すると、3年生は、「理想的自己像」と「対人交流」が高く、他者と交流の中で、自分を高めようと考えていることがわかる。これは3年生ともなると、発達段階からみて思春期の真っ只中にあり、自分の内面に目が向いていく時期であることを、心理社会的価値の面でも裏づけるものとなっている。この時期は「自己意識」が増大し、単なる「他者からの承認」といった依存的な交流ではなく、自ら積極的に他者との交流を求める中で、自己を理想的な姿に高め、確立させていこうと、思春期の発達課題に前向きに取り組んでいる姿が見られる。

 したがって、学校不適応生徒に対する指導援助にあたっては、このような発達段階を理解したうえで対応することが必要不可欠であり、『自我同一性(アイデンティティ)の確立』のための援助は重要な観点である。

工  学校生活に適応する姿はさまざまである

  多様な価値観を持っている生徒が、学校生活に適応している状態にあるが、その価値観を見いだしている姿は、性別や学年によって、大きく異なることがわかる。

 これは、一人一人の生徒が学校生活に見いだしているものは異なり、その一一人一人が適応できるような学校であることが求められているとも言えよう。

(6)調査結果全体を通しての考察

 学校不適応状態に関するアンケート調査(質問肢3-1〜3-9)の結果を点数化し、不適応状態を示す得点の高い順にA,B,Cの3つの群に分けて、生徒の不適応意識や場面などについて分析してきた。その結果、各項目について、学校不適応


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