研究紀要第96号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -087/162page
ウ 自己イメージ
自分に自信の持てるものがありますか、という質間に対しての回答は、「多い」「時々」を合わせて約75%あり、各群とも差が見られなかった。不適応状態を示す割合の高い生徒も、何らかの自信を持って生活していることがわかる。しかし、A群の約25%の生徒が、自分に自信がもてないと思って生活していることも事実である。
性格で変えたいところがあると回答した生徒は「はい」「少し」という回答を合わせると、各群とも約90%でほとんど同じである。しかし、「はい」という回答だけ見ると、C群の生徒よりA群の生徒の方が多く見られる。そのことから、A群生徒は、自分自身を低く評価している傾向が強いと思われる。特に、顔や体型などの外見的なものより、性格などの内面的なものに関して低い自己イメージを持っていることがわかる。
以上のことから、自己イメージを低く持つことは、学校生活に不適応状態を引き起こす大きな要因となることが考えられる。
工 場面、理由
A群の生徒は、自分の性格をいやだと感じるとき、あるいは、自分の体型に劣等感を感じるとき学校に行きたくないと思うことが、C群の生徒に比べて多いという結果が出た。ここでも、体型より、性格に関する劣等感の方が大きいことがわかる。外見より内面に目を向けているということは思春期前期の中学生の特徴であると考えられる。
以上の結果から、生徒が劣等感を強く持つことは、学校不適応に陥る大きな要因となることが考えられる。
オ 解決方法(求めているもの)
心理的な不安については、全体的に、教師や友達に援助を求める生徒の割合は少なく、自分で解決したいと思っている生徒がたいへん多く見られる。しかし、A群の生徒は、他の群の生徒より、教師に援助を求める割合が高い。
個人的な悩みについて、自分で悩みを抱えきれずに、教師の援助を求めるA群の生徒の姿がとらえられる。
7.教師へのアンケートの結果から
次の表は、A,B,C群の生徒の人数と、教師が見た不適応状態を示している生徒の人数、並びにその割合を挙げたものである。
群/学年 1年 2年 3年 合計 A P 203名 238名 208名 649名 T 40名 68名 61名 169名 % 20% 29% 29% 26% B P 282名 248名 251名 781名 T 25名 29名 30名 84名 % 9% 12% 12% 11% C P 202名 203名 237名 642名 T 13名 18% 13名 44名 % 6% 9% 5% 7%
* P 生徒の調査結果から見た人数
T 教師が学校不適応状態にあるととらえている生徒の人数
A群の生徒の中で、教師から見て不適応状態にあるととらえている生徒の割合は、26%である。また、教師は、B群の生徒の中で11%、C群の生徒の中で7%の生徒を不適応状態にあるととらえている。教師がA群の生徒の中に不適応状態にある生徒を多くとらえていることは、生徒の状態を適切にとらえていることをを示していると考えられる。しかし、A群の約75%の生徒を適応しているととらえていることから、何をするのもめんどうだと思いぼんやりしていることがある生徒など不適応状態が表面化していない生徒の内面については、とらえにくいものであると考えられる。
また、C群の中にも、不適応状態を示しているととらえられる生徒がいることは、教師がその生徒を不適応状態であると見て指導援助をしても、生徒自身には不適応意識がないために成果が上がらないことも考えられる。つまり、教師の主観と生徒自身の意識とのズレの表れと思われる。