研究紀要第96号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -088/162page
IV 第1年次の研究のまとめ
学校不適応の状態、意識などを調査・分析した結果、学校不適応の状態を示す割合が大きい生徒にみられる顕著な傾向として、次のようなことが挙げられる。
1.友人や教師からどう見られているかを気にし、無理して行動しており、望ましい対人関係が築けないでいる。
2.自分に自信の持てるものがありながら、集団の中では、思ったように行動できず、葛藤、不安を抱いている。
3.多様な価値観が見いだせず、心の柔軟性を持てないでいる。
4.学校生活全般に無気カ感が漂い、意欲が停滞している。
これらの背景には、自分は何に価値を見いだし、どのように行動したらよいのかがわからないでいる思春期特有の不安があると考えられる。
このような生徒に対して、どのような教育相談的な援助を差しのべたらよいかを調査・分析に基づいて考察すると以下のようになる。
1 研究の成果
(1) 調査・分析の結果、明らかにされたこと
学校不適応生徒の援助の在り方を探るために、県内中学校を学校規模及び地域を考慮して、2,072名を対象にアンケートを実施した。その結果、
○学校不適応状態にある生徒の意識や考え方などが明らかになった。
○調査分析で判明したものから学校不適応に関する望ましい援助の方向性が明らかになった。(2) 援助の方向性
1. 人間関係を醸成する指導援助をすすめる
友人に関する意識の質問肢で、学校不適応状態を示す割合が大きいA群の生徒は「はい」「時々」を合わせると、約59%が、「一人の方が気が楽だ」と答えている。
この孤立化の意識は、不登校を引き起こす要因になるものと思われる。
しかし、A群の生徒は、一見、孤立化を望んでいるようにみえるが、友人に関する意識を問う別の質問肢では、「友達がいなくてさびしい」と答える生徒は「はい」「時々」を合わせると約47%いる。同じく、友人に関する意識を問う質問肢で、「クラスの人と一緒にいて楽しい」と答える生徒は「はい」「時々」を合わせると約94%いることがわかる。
このことから、不適応状態を示す割合が大きいA群の生徒にみられる「一人の方が気が楽だ」という意識は、生徒にとっては現状におけるやむを得ない選択であると思われる。また、学級の友人から嫌われているかもしれないという感情は孤立化を招き、ますます不適応意識を増大させることになると考える。こうした状態にある生徒に対しては、
教師は、生徒一人一人がどんな思い、どんな見方で学校生活を送っているかを把握し、人間的な触れ合いを深める教育活動を展開させることが大切である。そのためには、相互受容、相互支持の雰囲気の中で、生徒同士が信頼関係を深めていけるよう、環境と個の調整の場面を確保し、人間関係の醸成に努める必要がある。
2. 集団の中で自己表出が促進される指導援助をすすめる
不適応状態を示す割合が大きい生徒でも約77%は「はい」「時々」を合わせると「自分に自信の持てるものがある」という自己イメージを持っている一方、「はい」「時々」を合わせると、約94%の高い率で「思ったように行動できないことがある」と感じていることがわかる。
これは、集団の中で抑圧感を受け、うまく自分を表現できないため自分には自信の持てるものがあるにもかかわらず、自分が予想した役割行動ができないからである。
このような実態に対しては、教師が集団の中で、生徒の活動や行動に批判的、攻撃的な態度をとらず、受容的に接し生徒の活動や行動を適切に認め励ますことでよさや可能性を発揮させ、自主的な活動を促進することが大切だと思われる。つまり、