平成6年度 研究紀要 Vol.24 個人研究 -095/156page

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表現力を高めるための多様な学習メディァを活用した学習指導の在り方

−表現活動の特性を生かす指導過程や評価活動の工夫を通して−

長期研究員 関 本  良

研究の概要

 本研究は,表現力を育てるために,「表現力」をとらえ直して,児童一人一人を生かす視点から学習メディアを活用したどのような指導方法が効果があるかを,文献研究や検証授業を通して明らかにすることをねらい,社会科を事例として2か年にわたって行ったものである。

 表現力の要素を「表現意欲」「創造力」「説得力」「応用力」の4っとし,それぞれの要素を高める単元段階での具体的な指導方法を,1) 個の情意面における,学習メディアを中心とした表現活動の特性を生かす指導,2) 直接体験を取り入れた指導,3) 自己評価・相互評価を組み合わせた評価活動の3点から総合的に考え,表現力を高める「指導の全体構造」を構築した。これをもとに,2っの単元を設定し,検証授業を試みた結果,次のようなことが明らかになった。

1) 個々の児童の表現活動の特性を把握し,指導に生かすことや直接体験を指導過程に意図的に取り入れることは,表現意欲の向上や表現内容の創造に大きな効果がある。また,表現方法を児童自ら選択することは,表現意欲向上の重要な要因の1っになる。

2) 相互評価と自己評価を組み合わせた評価活動によって,自己の特性やよさが自覚でき,それが表現意欲の向上や新しい考えを創り出す応用力の向上に寄与することができる。

I 研究の趣旨

 新学習指導要領による学校教育においては,社会の変化に主体的に対応して生きていくことのできる人間を育成することが求められている。

 このような学校教育を実現するために,社会科では,「国際社会に生きる日本人としての必要な資質の育成」や「体験的な活動の重視」・「個性を生かす指導の工夫と基礎的・基本的な内容の定着」とのかかわりから,特に,自分で思考し,判断したことを自分のよさや可能性を生かしながら 1) ,適切にあるいは創造的に表現する力,つまり「表現力」の育成が求められている。そのためには,表現しようとする行動や表現活動の過程で,児童のもつ能力や個性に応じた適切な指導や支援が必要とされている。

 そこで,表現方法としての学習メディアを中心に,個々の児童の表現活動の特性を生かす指導と評価活動の工夫・改善を図れば,「表現力」を高めることができると考え,上記の主題を設定した。

II 研究のねらい

 社会科学習において,児童の表現力を育成するためには,児童一人一人を生かすという観点から,学習メディアを活用した指導や児童の評価活動をどのように行えばよいのか,具体的な方法を実践を通して究明する。

III 研究の見通し

○ 児童の表現力を高める指導過程において,個々の児童の学習メディアを中心とした表現活動の特性を把握し,それを直接体験を取り入れた指導過程の中に組み込めば,一人一人の表現力を向上させることができるであろう。

○ 表現する段階で,相互評価と自己評価を組み合わせた評価活動を行えば,個々の児童の表現活動の特性やよさに気づくことができ,一人一人の表現力を向上させることができるであろう。

IV 研究の内容・計画

1 研究の内容

(1) 文献研究から,社会科における「表現力」や「表現活動の特性」「直接体験」の概念を定義し,表現力を高める指導法についての基本的な考え方を構築する。


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