研究紀要第100号 「国際理解教育におけるソシオドラマの活用」 -085/156page
2) 講義「3 ソシオドラマとサイコドラマ,ローノレプレイング」
ソシオドラマについて,理論的なイメージをつかむためのテキストに基づく説明。
3) 「4 私の行きたい国・行きたいシーン」(サイコドラマ)
テキストに基づいて説明してもなかなか理解できないことは容易に想像できるので,比較的簡単にサイコドラマを体験でき,豊かなイメージの世界に遊べる「風景構成法」 2) を実施した。
「どうでしょうか。先生方の中に,海外のこんな国に行きたいとか,こんな風景の中でのんびりしてみたいとか,そんな気持ちをお持ちの先生はいらっしゃらないでしょうか」 男子教員から,以前,ツァーで行ったオーストラリアの海岸で日向ぼっこをしたいという提案があり,それをやることにする。
オーストラリアの海辺。砂浜で,ツァーに参加した男女5人が,おしゃべりをしながら海に向かって石を投げている。海は,青と緑の色をたたえて,静かにうなるようにうたっている。波の音も遠く聞こえる。灰色の曇った空−しかし,薄明るい太陽の光が,自分と,背後の這松の籔を照らしだしている。
こうしていると,すべて消えてなくなりそうだ。自分が,存在しているのかも分からない。
増野によれば,こういった情景は「詩的に,動的に,力強く」 2) 表現しなければならないとされる。
這松になった人たちは,海風に合わせて陸地に向かって腕を突出し,しゃがんで這松を表現する。砂浜の5人は,石を投げ,おしゃべりをしながら午後のひとときを楽しんでいる。手をつないで海になった人たちは,静かに海の和音を奏でる。高く,低く,うなるような海からの歌声が静かに砂浜に響いてくる。こういったことを監督は,演技者からイメージを引き出し,指示を与えて,構成する。
サイコドラマを初めて体験した人の感想は,「不思議な経験をした」「意味がないと思っていたものに意味があることが分かった」「(自分の)表現力がないことに気付いた」といったものが多い。今回の感想もそのようなものだった。また,主役は,「そのまま眠ってしまいそうだった」と感想を語った。