研究紀要第100号 「国際理解教育におけるソシオドラマの活用」 -088/156page

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監督 「担任の先生が紹介する間,マリコさんは何を考えていましたか。言葉はよく分からなくても,だいたい何を言ってるか,分かるでしょう」
マリコ 「「マリコ」っていうところで,ああ自分のこと言ってるのかなあって。檻の中のお猿さんみたいに見つめられて,ブラジルでは20人くらいの小人数で勉強してたのに
(爆笑)…  日本は,人数が多くて大変だなあって思ったり… 」
監督 「マリコさんの首が,こんなふうにゆれていましたね。あれはどうしてかな」
マリコ 「恥ずかしくて…  やっぱり(しきりに首をゆらす)」
監督 「とっても内気なんですね。
さあ,先生は,このシャイなマリコさんを席に坐らせます。どんなふうにして坐らせますか。やってみてください」
担任 「では,マリコさん。あそこに坐ってください」
(担任は,マリコの肩を抱くように,席につかせる)

 監督は,マリコの坐った席の反対側に行き,児童たちに尋ねる。

監督 「マリコさんがあそこに坐りました。きみはなんて思ったかな。」
児童1 「ううん,悔しい(爆笑)。こっちに坐ればいいなという気持ちとほっとしたような気持ちと二っですね。」
監督 「こちらのきみはどうかな」
児童2 「やっぱり,残念だという気持ちと,近くに来れば話し掛けなくちゃいけない使命感で(爆笑)…  」

 監督は,さらに数人の児童の感想を聞き,その後,マリコの席に近付き,周囲の児童の感想を聞いた。

児童3 「友達になれるかなって期待と,どんな人だろうって」
児童4 「日本語できないっていうから,すごくかわいいな(爆笑)。テストになったらこうやって見せてやって…  」
児童5 「そうやって二人で0点をとる(爆笑)・・・」
監督 「それでは,ですね。マリコさんの周りの人は,マリコさんの肩に手を当ててください。そして,マリコさんへの自分の関心の強さを手で表現してみましょう。そ−う。それが,マリコさんへの気持ちですね。マリコさん,どんな感じ」
マリコ 「なんか,こう手で揺さ振られると…安心できるような感じ」
監督 「担任の先生は,どんなふうに感じていますか。安心していますか」
担任 「何だか,不安なんです。本当に仲良くやれるんでしょうか」

 担任は,本当に顔に不安を浮かべている。

監督 「どうしたらいいんでしょうね」
担任 「たとえば,みんなで自己紹介しあうとか・・・」
監督 「みんなで自己紹介をしないと不安だ。う−ん,そうですか。…  どうしましょう。・・・やってみますか」
担任 「はい」
監督 「では,先生からみんなに指示をだしてください」

 担任は,自己紹介の仕方を説明し,全員に自己紹介と握手をするように指示する。マリコに一番遠い後の席の児童から,順番に全員が自己紹介をし,マリコと握手する。ユーモラスな握手をして周囲をわかせる者もいる。マリコは,次第に上気してくる。

 最後に,キンコンカンコンのチャイムも握手して,自己紹介は終わった。


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