研究紀要第97号 「福島県における「学力向上」に関する考察」 -011/156page
(5) 好きな(嫌いな)学習内容
好きな学習内容について最も多いのが, 「小説(物語)」であり,「漢字の読み書き」 「詩」 「短歌・俳句」の順になっている。一方,「作文」や「文法」は敬遠され,国語嫌いを作りがちな学習場面となっている。
(6) 成績別に見た場合
成績を,上中下位の3段階に分けて分析すると,上位の生徒は,分析的・認知的学習にさほど抵抗がないが,下位の生徒は,生活的・実感的であり,身近な素材や自分との関連がないと興味を持続しがたい傾向が表れている。
そのため授業に対して,意欲をより高めるための工夫や,形成的な評価など課題解決のプロセスを重視した指導を求めている。
2 国語における学習行動
[理解−文学的文章の読解]
ここでは,最初に文学教材の一部を提示して,普段の学習行動を想起させながら,回答させた。
例) 中学2年 「子守歌」 加賀 乙彦
初七日に父の遺骨を埋葬してしまうと,少女は一人マンションにもどった。この一週間,大勢の人が出入りし,絶えず頭を下げ,八方に気を配っていたのが,にわかに静かになり,一人線香臭い場所にとり残されている。それが妙に寂しい。 (以下,略)
(1) 読み方の分からない漢字,意味の分からないことばに対して
「自分で調べる」と「友達にきく」が,ほぼ同数で,それぞれ40%である。
(2) 疑問を抱いたとき
文章を読んで疑問を抱いたとき,70%は「自分で考える」と答え,その際,「文章の前後から判断する」という回答がほとんどである。
しかし,「自分で考えない」という30%の生徒は,「考えても分からない」「めんどう」などと答えている。
成績との相関で見ると,下位の生徒ほど依存的であり,思考のプロセスを無視して,解答の正誤にのみこだわる傾向が感じられる。
(3) 話し合いの場面で
授業の中で,登場人物の人柄や心情について話し合いをするとき,どんな学習行動を示すだろうか。
発表に対して,全体的に消極的である。しかも,学年が上がるにつれてますます消極的になる。
その理由は,次のとおりである。
70%が「自分の考えに自信がないから」と答えており,「自分の考えが認められないから」とするものは少ない。発表して意見を闘わせようとする意欲は乏しいように感じられる。
また,「話し合いのとき,どんなことを考えているか」という問いに対して,「話し合いを聞いて,自分の考えを持とうとしている」とする回答が最も