研究紀要第97号 「福島県における「学力向上」に関する考察」 -012/156page
多いが,発表することへの消極性や自信のなさなどと併せて評価すると,友人の反応を見てから自分の考えを決めようとする主体性の乏しさがうかがえる。
[表現−文章表現]
例題 中学2年
「日常生活の中のある出来事から思うこと」
作文のテーマ,文章の構成や表現の工夫の大切さについて,多くの生徒は意識はしているが,実際に内容を検討しながら書こうとする探求的な生徒は少ない。学年が上がるにつれて表現を工夫しようとする意欲が減少している。
(1) テーマ,内容,組み立て,表現
「自分が最も書きたいことは何かを意識して書いているか」については,「いつも」という生徒は,20%であり,大半の生徒はテーマを十分に明確化しないまま書いている。
また,「文章全体の組み立て」については,「思いつくまま書く」という答えが半数を越えている。
その一方,「表現工夫」については,「工夫して書こうとしている」と意識している生徒も多いのであるが,学年が上がるにつれて減少し,3年生では,44%の生徒が「工夫しようとは考えていない」と答えている。
(2) 自分なりの物事の感じ方や見方があるか
この問いには,30%が「とてもある」と答え,「少しある」という控えめな答え方をした生徒と合わせると80%になる。
しかし,「国語が嫌いだ」とする生徒たちの大半は,「あまり思っていない」「全然思わない」と答えている。
[授業に望むこと]
授業に対して,生徒たちはさまざまな要望を持っているが,その幾つかについて成績別に紹介する。
成績別といっても,特に大きな相違があるわけではないが,全体的に下位の生徒に「特にない」とする回答が多いことが気になるところである。
3 まとめ
国語に対する好き嫌いの分節点が,小学校5年と中学校1年にあることは,分析を必要とすることのように思われる。また,一般に生徒たちが,自分で調べたり,発言したりという場面で消極的なこと,表現(作文)指導の不足ということと併せて,もう一度,授業の在り方という観点から検討すべき事柄であると考えられる。自分なりの感性に秘かな自負心を持っているように見受けられる生徒たちの期待に応える授業が望まれている。