研究紀要第97号 「福島県における「学力向上」に関する考察」 -015/156page
2 数学における学習行動
ここでは,最初に数学の文章題を提示して,普段の学習行動を想起させながら,回答させた。
A君は,家から学校まで行くのに,歩いて行くより自転車の方が30分早く着く。歩く速さを時速4Km,自転車の速さを時速12Kmとする。家から学校までの距離を求めなさい。 (1) 問題の意味が理解できないときどうするか
「自分で考える」「自分で調べる」と答えているのは,ほぼ半数である。
(2) なかなか式ができないときどうするか
あくまで「自分で考えようとする」生徒は,少ない。学年が上がるにつれ,「きく」対象が,家族から友人に変わっていくのも自然なことであろう。
(3) まだ,習っていない問題にあったとき,どうするか
成績の,上位,中位,下位,それぞれの反応は,グラフのとおりである。50%前後の生徒たちが成績にかかわりなく「自分で調べる」としている。
3 まとめ
数学について調査する前に,仮説的に考えていたことの一つは,小学校3年生あたりから始まると思われる「算数嫌い」である。これは,この頃から分数や小数点の計算が始まることから,見当がつくことであった。調査の結果は,見事にそれを裏書きしている。
意外であったことの一つは,中学1年生時における数学の「明るさ」である。「どちらかといえば」という留保つきであるものの,70%前後の生徒が数学は「楽しく」「分かりやすい」と答えているのである。そして,それと関連して,数学を好きになった時期としても,中学1年時は大きな意味を持っている。
「数学嫌い」が問題になっているが,数学を嫌いになった時期と,数学が好きになった時期が,ほぼ同じ頃であることは,注目されて良いであろう。また,その理由として共通に最も大きな要因として挙げられているのが「授業」であることも,はなはだ示唆的であると言えるのである。