研究紀要第98号 「環境教育講座の在り方を求めて」 -030/156page
(2) 講座の在り方に関する研究についての考察
ア 研修者の「環境教育講座に期待する内容」としては,環境教育の理念や目標とその内容の理解,環境教育の授業の在り方,方法,そのための具体的な教材,学校全体としての実践の方法などであり,我々が設定した講座の目標とほぼ一致しており,講座の目指す在り方が適正なものであったと思われる。
イ 「学校教育全体の中で,環境教育の推進役となって活動していこうとする」意識については,ほぼ全員が「是非進めていきたい」か「何らかのかたちで進めていきたい」と答えており,研修者の意識を高める上で効果的であった。
ウ 今回の環境教育講座の目標の一つである「環境教育の理念の理解」については,37名の研修者の内36名までが「良く理解できた」「だいたい理解できた」と答えており,理念の理解を図る上で有効であった。
工 研修した教材の技能の習得意識については,野外研修の教材が習得の割合が比較的高かった。なかでも「騒音の測定法」「理化学的水質調査法」「大気汚染の調査法」などが上位を占めた。これらの教材は,誰にでも気軽に体験を通して理解できるよう工夫した内容であったことが理由の一っとして考えられる。
オ 学校での活用可能な教材は,「ごみ問題を考える」「水生生物を指標とした水質調査法」「川の自然度の調査法」「エコ・クッキングを体験してみよう」などが上位を占めた。
工とオの結果から,研修により技能が習得できた教材と学校での活用可能な教材は一致していないことが分かった。このことは,技能が習得できても,学校に機器や器具等がないなどの理由から学校で活用できないことを意味しているものと考えられる。
また,学校での活用が可能と回答した教材のうち,実践したか実践の予定があると答えた教材は5割程度にとどまっている。このことは,研修者が所属する学校の施設・設備,予算などの実情や生徒の実態と照らし合わせて総合的に検討して判断した結果によるものと思われる。
(5) まとめ
1) 「環境教育の理念の理解」「環境教育についての意識の高揚」「研修教材の技能の習得」については,初期の目標を達成できた。
2) センター内の校種,教科間の枠を越えて,各教科等の担当所員が共同で研究を進めたことは,いろいろな視点から環境教育を考えることができ,講座の内容を深めるのに役立った。また,担当所員が独自に各専門教科等の視点から考案した教材間の整合性をどう図るかという不安があったが,テーマを設けたことにより,そのテーマに即した教材を準備することができ,各教材間に統一性を持たせることができた。
3) 野外研修や室内研修の中で行った小・中・高等学校の校種共通の研修形態は,校種間の交流が図れ,研修者の感想も好評であった。また,協議では中学校と高等学校の研修者が一堂に会してお互いに意見交換する場を設定したので,お互いの校種における環境教育の取り組みの現状や問題点などを理解することができ,校種間の連携が図れた。
4) 外部講師による講義の内容が環境教育の理念,福島県の自然環境,学校全体での取り組みなどを理解する上に役立つものであり,研修者には大変好評であった。
5) いろいろな教科等の視点,多岐にわたる分野ら取り上げた内容の教材を研修することで,研修者は自分の専門教科以外の教科を研修でき,環境教育に対する考え方に広がりと深みを増すことができた。
6) 野外研修の午後の部に設定した選択研修については,選択教材数を多く準備するなどして発展させたことにより,研修者の選択幅を広げることができ,希望が生かせる研修ができた。