研究紀要第98号 「環境教育講座の在り方を求めて」 -032/156page
(3) 学習活動の展開
小・中・高等学校それぞれの校種において,次のような展開で授業実践を試みた。学習内容は,児童・生徒の発達段階に応じて発展・深化を図った。授業形態は,下表の3〜6の学習活動については家庭科と理科のティーム・ティーチングとした。
1. 身近な環境に関心を持つ 小学校6年 中学校1年 高等学校1年 家庭科:「衣服の手入れ」の洗濯実習で,生活排水問題を取り上げ,できるだけ水を汚さない上手な洗濯の仕方を考える。 理科:「身の回りの物質」で,発展として河川の水質調査を実施。汚染状況とその原因を知る。 化学IB:「溶液」で,CODを含めた溶液の濃度の考え方や希釈の意味が分かり,水質の検査方法を知る。 2. 工コ・クッキングの調理計画
視点 1) 生ごみをできるだけ出さない工夫
2) 水をできるだけ汚さない工夫3. 工コ・クッキングの実習 視点 1) 生ごみをできるだけ出さない工夫 じゃがいも料理(自由献立)
工夫 ・ じゃがいもの廃棄率を減らす卵焼きと野菜添え,ポタージュ
・ 残り野菜の利用→ポタージュチキンピラフと野菜添え,ポタージュ
・ 残り野菜の利用→ポタージュ4. 排水の汚れ度調査 視点 3) 洗い方の違いによる排水の汚れ度とその影響 ○ 水質調査
・パックテストによるCODの測定
・肉眼による透明度の測定
○ 生物(ヒメダカ)への影響の観察○ 水質調査
・パックテストによるCODの測定
・透明度(簡易)の測定
○ 生物(ヒメダカ)への影響の観察○ 水質調査
・パックテストによるCODの測定
・透明度の測定
○ 水質浄化のシミュレーション5. 環境に配慮した食器の洗い方の実践と後片付け 視点 2) 水をできるだけ汚さない工夫 工夫 ・汚れのひどいものは拭き取ってから洗う ・洗剤は適量を使用する ・三角コーナーや水切り袋を用いる 6. 自分たちでできる環境に対する配慮点をまとめる
注)エコ・クッキングとは,エコロジークッキングの略で,環境にやさしい料理術といった意味の造語である。ここでは,生ごみを減らしたり,排水をできるだけ汚さない調理の工夫ととらえた。(4) 試行授業
本教材では,生活排水とごみをキーワードとし,この2っの視点から環境問題への関心を高め,それらが環境に及ぼす影響について考えさせたい。具体的には,調理実習や後片付けの過程で生じる台所排水を使い,水質調査や生物の観察等を通して,自然界への影響を科学的に把握させることで問題点に気付かせ,問題解決に向けて意欲的に取り組む態度を養いたい。また,調理で出た生ごみについても取り上げ,適切に処理ができる技能を身に付けさせたいと考える。ここでは,中学校で試行した家庭科と理科のティーム・ティーチングによる3時間続きの授業実践例(学習過程:P13,14参照)を示す。
1) 教材名 「エコ・クッキングを通して環境を考える」
2) 指導計画 (総時数8時間:家庭科4時間(3〜6/7),理科4時間)
家庭科 理 科 朝食つくり -----7時間
食事づくりの仕事 ………2エコ・クッキングの計画(朝食づくり)…2
エコ・クッキング(調理実習)…2(本時)
身近な環境を調べよう --- 4時間
八反田川の水質調査の計画…1
八反田川の水質調査 ……… 1
生活排水の水質調査…1(本時)
河川と生活排水のまとめ…… 1
朝食づくりの反省と実践計画……1 3) 本時のねらい
エコ・クッキングや排水の汚れ度調査などの体験を通して,環境を守るために自分たちにできることが分かり,日常生活で実践していこうとする意欲を持つことができる。