研究紀要第99号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -050/156page
II 主題についての考え方
1 学校不適応とは
児童生徒は,自己の望ましい姿をめざして成長しようとする存在である。その児童生徒が集団生活の中で自らを発見し,高めていくためには,学校や学級集団に適合し,個性や能力を生き生きと発揮できる状態にあることが必要と思われる。
次に,「学校適応」と「学校不適応」について,対比させながら述べる。
学校適応とは 「集団の中で自分の存在を感得し,集団の中に予測する(このようにありたい,このようにできるだろう)自分の役割行動が実現でき,集団の中で自分のよさが十分に発揮できていると感じていることであり,自己実現に向かう姿」と押さえる。
一方,児童生徒は,自分を学校や学級集団に合わせようとしたり,自分に合うように学校や学級集団そのものに働きかけたりしようとする。しかし,これらがうまくいかずに児童生徒と学校や学級集団との間に不調和が生じ,なんらかの緊張が生まれたとき,不登校に代表されるようなさまざまな問題行動が発生しやすい状態になる。
そこで,
学校不適応とは 「集団の中に自分の存在を感得できなかったり,集団の中に予測する自分の役割行動が実現できず,または,集団の中で役割行動が発揮できないと感じて,本来の自分の個性を引き出せないでいることで自己実現に向かう働きが停滞していた状態である」と押さえる。
2 援助の在リ方について
人間は絶えず環境の困難に直面する。そして,この環境の課題を解決し,困難な障壁を乗り越えているのである。しかし,学校不適応は,その環境と不調和のまま調整できず,不適応を引き起こしている状態である。
学校になじめず,ひきこもり,無気力といったのを含め,さまざまの問題行動を生んでいるのであるが,問題行動を示す児童生徒に共通してあるものは,学校不適応意識の存在である。現実に問題を起こしているのは,不適応意識があるからだといえよう。身体化し,行動化する現象の面に目を向けるよりは,現象の裏に隠れている学校不適応意識を取り上げることが重要であると考える。
したがって,環境との間に生じた児童生徒の不適応意識は,環境と個の調整によって解決されるべきである。また,学校不適応意識を抱いた児童生徒には,例えば,学校不適応の主要な一っとして不登校があげられるが,こうした状態にある児童生徒達にとって重要なことは,単に再び学校に通えるようになればよいというだけではなく,不適応という状況を自らの努力で克服していく過程で,どのような能力を身につけ,いかに成長し自立していくかということにある。つまり,適応を図るために個人の成長をいかに促すかという視点に立った援助であると考える。
上の図の援助の視点は,集団での望ましい関係をつくるための「調整」だけでなく,個に対する直接的な教師の手立てによって適応する力を育て,環境と個の関係を前向きによりよく「構成」していくという意味合いを持つ。
適応が単に周囲の者たちの考えを無批判に受け入れたり,それに従ったりすることであれば,適応していても,その適応は望ましいものとは言えない。