研究紀要第99号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -051/156page
したがって,自分に合うように学校や学級集団そのものに働きかける能動的な力を育てることが必要である。本人が学校や学級集団に積極的に働きかける中で環境が変わり,個も変わるといった援助が求られる。
3 研究仮説
「学校不適応」の背景にある要因を明らかにし,環境と個の調整及び構成に向かって個性や能力が発揮できるよう援助していけば,学校不適応状態にある児童生徒の適応意識は高まり,自立的な行動がとれるようになるであろう。 4 研究計画
第1年次(平成5年度)
(1) 学校不適応生徒への援助の在り方を探るためのアンケート調査を実施する。
(2) アンケートの調査結果を分析し,学校不適応の要因を明らかにする。
(3) 援助試案作成を試みる。
第2年次(平成6年度)
(1) 援助試案を作成する。
(2) 学校不適応に関するアンケート調査を研究協力校において実施する。
(3) 援助の試案を研究協力校で実践し,その効果を調査する。
(4) 実践の反省に基づいて試案を検討するとともに研究のまとめをする。
第3年次(平成7年度)
(1) 第2年次の実践を踏まえ,検討した試案によって研究協力校で実践し,その効果を調査する。
(2) 望ましい援助の在り方に関する3年間の研究をまとめる。
5 第1年次研究の成果から
県内中学校20校の中学生2072名にアンケート調査を実施した結果から,成果を述べる。
(1) 学校不適応状態に関する生徒の傾向
学校不適応の状態,意識などについて分析してみると,学校不適応の状態を示す割合の大きい生徒に見られる顕著な傾向として,次のようなことが明らかになった。
1) 友人や教師からどう見られているかを気にし,無理して行動しており,望ましい対人関係が築けないでいる。
2) 自分に自信が持てるものがありながら,集団の中では,思ったように行動できず,葛藤や不安を抱いている。
3) 多様な価値が見いだせず,心の柔軟性を持てないでいる。
4) 学校生活全般に無気力感が漂い,意欲が停滞している。
(2) 学校不適応に関する望ましい援助の方向性
学校不適応生徒への援助の在り方を探るための調査結果の分析から,学校適応に関する望ましい指導援助の方向性が,以下のように明らかになった。
1) 人間関係を醸成する指導援助をすすめる。
2) 集団の中で自己表出が促進される指導援助をすすめる。
3) 学校生活に多様な価値を見いだす指導援助をすすめる。
4) 生徒一人一人の内面を理解する指導援助をすすめる。
III 第2年次の研究実践
本年度は,第1年次の研究を基にして,学校不適応問題の背景にあるさまざまな要因を考えながら,集団への適応力を高めるための指導援助の試案を作成する。そして,生徒一人一人の個性を生かし,人間関係の醸成に目を向けた実証的な研究をするものである。
1 試案の作成
学級を集団の基本に考え,生徒の学校生活に対する適応という角度から,「集団・対人への適応意識を高める」,「個の適応意識を高める」に視点を当て,学校適応に向けた適切な援助の在り方を探るた