研究紀要第99号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -052/156page
めに,下の図のような考えで援助試案を作成した。
2 試案の考え方
望ましい指導援助の方向性を受け,「集団」「対人関係」「個人」の三っの視点から援助試案の内容を考えた。これらの視点は,互いに深く関係し合っているために,三っの視点を明確に区別した試案の作成は困難である。以下に各試案について述べる。
(1) 試案−1
[教師と生徒との人間関係を深める指導援助]
学級の基盤となる教師と生徒との望ましい人間関係を考えるとき,四っの援助の方向性の中で「人間関係を醸成する援助指導」があげられる。ここでいう人間関係とは,教師と生徒との人間関係である。
試案−1では,生徒相互の人間関係の基盤となる教師と生徒との人間関係に焦点を当て,特に,生徒が教師から大事にされているという気持ちを抱くことができるような教師から生徒への声かけを,授業を中心として工夫する。
(2) 試案−2
[生徒同士の人間関係を深める指導援助]
集団の中で不適応意識・状態を持つ生徒の中には自分に自信を持てるものがありながら,集団の中ではうまく表現ができず,思ったように行動できないで葛藤や不安を抱いている者がよくみられる。
試案−2では,四っの援助の方向性の中の「集団の中で自己表出が促進される指導援助」と「学校生活に多様な価値を見いだす指導援助」に焦点を当て体験的な方法によって生徒同士の人間関係を深めながら本音と本音の交流の場を設定し,積極的に自己表出できる機会を与える活動を工夫する。
(3) 試案−3
[社会生活技能を高める指導援助]
学校・学級集団において不適応状態に陥ったり,不適応意識を抱いたりする生徒は,一般的に社会性が未熟であることが多いと言われている。
試案−3では,四っの援助の方向性の中で,「人間関係を醸成する指導援助」と「集団の中で自己表出が促進される指導援助」に焦点を当てて,集団の中での望ましい人間関係を醸成できるよう自ら行動できる指導援助をねらいとしている。具体的には,さまざまな社会生活技能の中から「あいさつ」を取り上げることによって,対人交流の活発化を図りながら社会性を高める工夫をする。
3 試案の実施計画
(1) 協力校 中学校 (2) 実施学年 第1学年(6学級226名) (1試案を2学級ずつ実施) (3) 事前調査 平成6年8月31日〜9月3日 (4) 試案実施 9月5日〜9月17日 (5) 事後調査 9月19日〜9月22日