研究紀要第99号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -054/156page

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5 試案の実践

試案−1 (教師と生徒との人間関係を深める指導援助)

 本試案は,学級経営の基盤となる教師と生徒との望ましいかかわりに焦点を当て,教師が生徒一人一人を大事にする姿勢で声かけを行うものである。学級担任の立場から日常生活の中で気軽な声かけを行い,教科担任の立場から授業の中で意図的な声かけを行うことにした。その際,次のような点に留意したいと考えた。

・ 日ごろかかわりの薄い生徒に意図的に近づく。
・ 一人一人の個性やよさに積極的に目を向ける。
・ ゆとりを持って生徒に接し,生徒の話によく耳を傾ける。
・ 教師自身が自分を語ることによって,生徒との心理的な距離を縮める。
・ 指示,命令的な言葉や一方的な非難や批判,教師の価値判断の押しつけなどは避ける。


1 試案の内容

 本試案の声かけを行う場と機会,主な内容は,次のとおりである。

(1) 声かけの場と機会

1) 日常の生活時間の中で
・ 朝や帰りの短学活
・ 給食時間
・ 放課後 など

2) 授業の中で
・ 導入の時
・ 展開の時
・ 終末の時 など

(2) 声かけの内容

1) 日常の生活時間の中で
・ 生徒にかかわる身近な話題
・ 新聞,テレビ,本からの話題
・ 地域や学校の話題
・ 個人や学級の良い点,がんばった点
・ 教師の子どものころのエピソード など

 具体的には,次のような言葉が考えられる。

○ 「今日の顔色はいいね。(ちょっと,ねむそうだね)」
○ 「最近寒いけど,かぜは大丈夫かい」
○ 「○○さんの家でも犬を飼っていたよね」
○ 「○○さんの趣味も同じだね」
○ 「ブラックホールって,知ってる。今度, 発見されたんだってね」
○ 「町の体育館がついに完成したね。中に入ったことはあるかい」
○ 「昨日の大会で,野球部が優勝したらしいよ。よくがんばったね」
○ 「○○さんのあいさっは,目を見てきちんとできるのがすごいね」
○ 「校内合唱コンクールでは優勝を逃したけど,みんな,よくやったぞ」
○ 「月曜日は,先生も学校に来たくない気持ちになるよ。…」
○ 「先生も,中学生のころ同じ悩みを持っていたんだ」
次のような言葉は慎みたい。
・ 「それは,こうしなさい」
・ 「結局,そんなこと,意味がないんだ」

2) 授業の中で
・ 真摯な取り組みをした生徒の紹介
・ 独創的な取り組みをした生徒への賞賛
・ 活発な取り組みをした生徒への激励
・ 目立たない生徒への細かな声かけ など

 具体的には,次のような言葉が考えられる。

○ 「ノートのとり方が上手だね」
○ 「いい考えだね」
○ 「上手な発表だね」
○ 「すごい。この次も期待できるぞ」
○ 「先生もびっくりした」


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