研究紀要第99号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -058/156page

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なる,仕事ができるようになる,という伝説が続く。ある町で,この卵を食べてみんなの役に立ちたいという青年「A青年」と家族や親戚で分けて食べるという青年「B青年」,町中の人に分けてやるという青年「C青年」がいた。

 この3人が,町長選挙に出た。だれに投票するか生徒一人一人の立場を明確にさせ,最初は生活班ごと,次に支持班ごとに分かれて(下図),支持理由の話し合いが行われた。机間指導する教師の一言一言にうなずいたり,ゆさぶられたりしながら話し合いが進んだ。

教室環境
教室環境

 特に印象的だったのは,普段目立たないA群生徒(下表の2回目,B青年を支持した生徒)が教師に支えられながら発言し周囲の生徒がその意見に十分耳を傾けていたことである。

 この生徒の発言によって,B青年支持者が一挙に増えた。(下表の3回目)

支持変容一覧
A青年支持 B青年支持 C青年支持
1 2人 0 34
2 26 1 9
3 3 17 14
(挙手しなかった生徒は除く)

 最後に,教師から,立場の違う人の意見にも十分耳を傾けることの大切さが話された。

授業者の感想

 全体的な雰囲気としては生徒ののりがよく活発に活動していた。楽しい雰囲気の中で授業が行えたと思う。

 特に,不適応傾向のある○○(A群生徒実名)が意欲的に発表していたこと,多動傾向のある○○(A群生徒実名)の意見に多くの友人が説得されたことは,彼らの存在が認められているという意味で,よかったと思う。

授業を振り返って

○ 身近な小動物や教師の氏名と結びつく小動物が登場し,教師自身の小学生の時の体験談などをまじえた小気味よい話が,授業前にぼんやりしていた生徒を十分授業に引き付けていた。

○ 生徒が教師の話や問いかけに明るく反応し,発問にも素直で前向きに答えていた。

○ 教師の声かけに対する生徒の反応が早く,表情や目の輝きから教師との一体感が感じられた。

○ 机間指導では,励ましたり支えたり,ときにゆさぶりをかけたりしながら本音の発言を促していた。

 本時は,生徒の生活に深くかかわる話題や教師の体験談が豊富に取り上げられ,どの生徒も教師に対する親近感を抱きながら教師の話に十分耳を傾けていた。こうした教師と生徒との人間関係のよさを基盤として本音の発言が連続した授業であった。

4 実践の結果

(1) A群生徒の変容

 事前の実態調査でA群であった生徒の学校不適応状態や意識の変容を整理した。[資料1-1]と[資料1-2]

資料1-1 資料1-2
生徒 不適応状態 不適応意識 生徒 学級雰囲気
事前 事後 事前 事後 事前 事後
a A A 12 10 a 14 17
b A A 8 7 b 27 20
c A B 4 1 c 24 28
d A C 7 6 d 22 28
e A B 9 7 e 14 16
f A A 7 11 f 16 17
g A A 8 9 g 24 24
h A A 12 11 h 26 30
i A A 9 9 i 12 18
j A B 4 5 j 27 28
k A A 7 7 k 28 24

(上記資料の中の表中の 太字 は,好ましい変容が見られた生徒を示す。)


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