研究紀要第99号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -059/156page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

 [資料1-1]によると,A群生徒11名のうち4名の学校不適応状態が軽減し,6名の学校不適応意識が軽減していることがわかる。

「学級雰囲気調査」 [資料1-3]
「学級雰囲気調査」 [資料1-3]

 さらに,自分の学級の雰囲気をどのように受け止めているのかについて調べた「学級雰囲気調査」 [資料1-3]から,A群生徒の変容を整理した。[資料1-2]これによると,8名の生徒が学級の雰囲気を以前よりも好ましいものと受け止めていることがわかる。

 以上の調査から,学校不適応意識が軽減し,学級の雰囲気を以前よりも好ましいものと受け止めるようになった生徒の過半数が,学校不適応状態を軽減させたと言える。このことから,本試案は,教師と生徒,さらに生徒相互の人間関係をより望ましいものにしていくうえで効果があったと考えられる。

(2) 教師の意識

 試案のうち授業の中での意図的な声かけについて,教師自身の意識を探ってみた。次の感想は,各授業担当者の感想の一部抜粋である。

各授業者による実践授業の感想

(1組)

・ 常日頃の声かけや発言の機会が少ないせいか 目立たない生徒はとまどった 感があった。(杜会科)

・ 普段あまり目立たない生徒も, 自分のスケッチがほめられて,集団の中での自分の存在感を認識できた様子 がうかがえた。(理科)

・  4人 (A群生徒実名) の表情に一瞬明るさが出ていた 気はする。 声をかけてもらいたい らしい感じは受けた。(数学科)

・ 彩色について アドバイスしてやると良い彩色になったことを喜んでいた。 (美術科)

・  ほめられた生徒は はずかしそうな表情をしながらも うれしそう だった。… 毎時間ほめる場を意識的につくることはとても大事なこと である。(国語科)

(2組)

・  「生徒の反応」は,私自身にとって非常に勉強になることばかりである。 (英語科)

・  普段目立たない生徒が, みんなの前では発表できなかったものの, 教師にむかってぼそぼそと声を出すまでになった。 …一人一人の 生徒に対する細やかな心配りや声かけを大事にしていきたい と考える。(社会科)

・  不適応傾向のある生徒に注意して机間指導した が,…書けていたようだ。次時にその 感想を発表する段階で,指名して賞賛していく ようにしたい。(国語科)

・  教師が努めて明るく楽しく話すように心がけたかいがあって,不適応傾向にある生徒も,笑顔で練習に取り組めていた と思う。(学級活動)

 以上のように,授業後の教師の感想には,「毎時間ほめる場を意識的につくることはとても大事なことである」とか「生徒に対する細やかな心配りや声かけを大事にしていきたい」のように,教師一人一人が本試案を積極的に受け止めて実践に臨んだことが記されている。さらに,「ほめられて,集団の中での自分の存在感を認識できた様子」とか「表情に一瞬明るさが出ていた」「普段目立たない生徒が…ぼそぼそと声を出すまでになった」のように,生徒の好ましい反応を感じとったことも多数記されている。このことから,今回は短期間での実施であったために,多くの生徒の学校不適応状態を好転させるまでにはいたらなかったが,常に適切な声かけをしていくことの重要性を,教師一人一人が把握したと考えられる。

(3) 生徒全体の意識

 試案の生活や授業の中での教師の話や声かけを生徒がどのように受け止めているかについて探ってみた。次の資料は,本試案実践2学級の意識の平均である。[資料1-4]


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。