研究紀要第99号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -060/156page
この調査結果から,両学級の生徒の多くが先生は自分たちのことをよくみて声をかけてくれている,先生の励ましで自信が付きやる気が出る,などと感じていることがわかる。[資料1-4,項目2・3・5]
また,生徒が印象に残る先生からの話や励ましを書いた中に,A群生徒も次のような記述を寄せている。
以上のことから,生徒の多くが本試案で行った教師からの適切な声かけを積極的に受け止めたことがわかる。このことから,本試案は,教師と生徒との人間関係をより望ましいものにしていくうえで効果があったと考えられる。
しかし一方で,生徒が先生と話したり相談したりする意識が低いことも事実である。 [資料1-4,項目4] 今後,本実践で培った教師と生徒との望ましい人間関係をもとに,より一層両者の関係を深めていくことが大切であると思われる。
まとめ
(1) 教師の適切な声かけは,教師と生徒との人間関係をより望ましいものにしていく基本である。教師が生徒一人一人を大事にする姿勢で声かけを行う本試案の実践によって生徒相互の人間関係も深まり,学級の雰囲気を好ましいものと受け止めることができるようになった。このことから,本試案は,教師と生徒,生徒相互の望ましい人間関係を醸成する指導援助になったものと考えられる。
(2) 本試案の実践を通して,教師自身が声かけの必要性を認識することができ,生徒も教師からの適切な声かけを積極的に受け止めていることがわかった。それだけに,常に教師は生徒一人一人の内面の理解に努めながら適切な声かけを行い,生徒一人一人を生かした学級づくりを心がけていくことが大切である。
(3) 生徒や教師の意識から,本試案の場合,長期的に継続した取り組みが大切であることがわかった。今後,他の試案などとも組み合わせた取り組みを日常的に展開していくことが,学校不適応意識や状態をさらに軽減,解消させていくうえで有効であろう。