研究紀要第99号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -064/156page
3 実践の様子
(1) 演習1について
初めて行ったこの演習に対しては,目新しいこともあり,演習そのものを生徒たちがとても楽しんで行っていたことが,授業の様子や授業者の記録からうかがえた。
1) 生徒の様子
(生徒たちが意欲的に取り組んでいる)
生徒 (表情も明るく)ぼくは,青の旗だ。
生徒 ええ。R君が青の旗なの?
生徒 あら,Eさん,私とおんなじね。
生徒 へえ,みんな青なんだね。
(内気な生徒は,そっと回りを見ながら,旗をあげている。)
教師 あんまりまわりの人を気にしなくてもいいんだから,思いきって,自分の好みで旗をあげてみなさい。
(略)
2) 実践者の振り返りから
・ 同じような演習の繰り返しであったが,新鮮さがあった。楽しく演習することができた。
・ この演習では,赤か青の旗を出すという簡単な自己表示を行うものなので,比較的孤立傾向にある生徒も抵抗なく演習に加わっていた。このことから,日ごろからこうした演習を取り入れていくことが必要であることがわかった。
・ また,演習後もこの時の話題が広がり,相互の会話が活発になされていったことがうかがえた。
(2) 演習2について
1) 生徒の様子
(生徒は,教室で身軽な服装に着替えてから空き教室に移動し,教師から演習の説明を聞いた。教師の説明をじれったそうに聞きながらもメモ用紙を興味深く見ていた。
教師 1) 第1問です。「あなたの好きな季節は何ですか」
(生徒 下図のように移動)
教師 さて,移動が終わったようなのでなぜそこを選んだか聞いてみます。
(この時 ア=12人,イ=1人,ウ=13人,エ=10人 に別れた。)
生徒 あれ。ぼく一人?
教師 ここは,一人だけ? もっといそうな気がしたんだけどな。S君はどういう理由で夏を選んだの?
生徒 夏は部活も盛り上がるし・・・。
教師 なるほどね。S君は活動的だなあ。
(中略)
(途中,動くのが面倒になり,メモに○をつけた場所に移動しなくなったので,教師は雰囲気を変えるため,ここで)
教師 先生がやっている役を誰かにやってもらおうと思うんだけど… 。
(と話しかけ,みんなをちゃかしていたM君をリーダーにし,場を盛り上げた。)
友達同士で選んだところをのぞきこみながら,演習を行っている様子が,うかがえた。