研究紀要第99号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -073/156page

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2) K子の場合

ア K子のプロフィール

 K子は,普段から集団の中へ入ろうとせず,孤立している生徒である。事前調査でも,学校不適応状態を示す割合は5点と高く,A群の生徒である。

イ 実践での様子

 実践での様子を観察すると,「今日は席が離れている人とあいさつしよう」という 教師の指示に,全く動こうとしなかった。 そのため,K子にはこの演習は負担だったのではないかと,感じられた。

ウ K子の記録用紙から

[資料3-5]
[資料3-5](K子の記録用紙から)

 [資料3-5]の記録用紙からわかるように,はじめに,「C」(達成できない)の自己評価がついている。これは,「相手からあいさつされる前にあいさつしよう」と,K子自身にとっては,難しい目標行動を選んだためであることがわかる。

 K子にとっては,今の学校不適応の状態から脱却したいがために,このような高い目標を設定したと思われる。

 2回目以降は,担任の「あまり無理せず,簡単にできそうなことから始めようね」という助言から,「相手の顔をちらっと見る」とか「小さな声で」など, 取り組みやすい目標を設定 している。

 また,記録用紙に書かれた,担任の「K子さんの笑顔のあいさつは気持ちがいいわ。目が小さくてかわいいよ」という絵入りの励ましは,K子にとって大きな支えとなったと思われる。

工 実践による変容

 学級の雰囲気調査で,事前・事後を比較した結果は[資料3-6]のように,大きく変容している。学級の雰囲気を好ましく感じるように変わった。

[資料3-6]
[資料3-6]

 学校不適応意識においても,「授業中は楽しいですか」という質問に対しては,事前調査での「少し」から事後調査では「はい」に変化している。また,「学校では一人の方が気が楽だと思いますか」という質問には,事前調査での「多い」から事後調査では「時々」となっており,学校への不適応意識が軽減されている。

 反面,「思ったように行動できないと思うことがありますか」に対しては,事前調査での「いいえ」から事後調査では「はい」に,「学級の人からよく思われようと無理して行動していますか」に対しては,事前調査の「少し」から事後調査では「はい」に変わっている。

 これらのことから,本実践を通して,K子は 級友があいさつしてくれることを好意的に受け止める ようになり,自分でも頑張ってあいさつしてみようと意識していることがわかる。しかし, 行動変容には至らず, 努力してはいるものの,まだうまくはいかないと感じていることを示すものであろう。このような意識面の変容は,本実践を継続する中で,行動変容が現れてくる前段階と期待できよう。


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