研究紀要第99号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -075/156page
事前・事後の比較において,変容が明確に現れた2項目について抜粋した。
「5 あいさつはできるが特定の人としかできない」において,「全くない」という回答は減少している。これは自分の「あいさつ」という社会生活技能を見つめることにより,「特定の人としかあいさつできていなかった自分に気がついた」ことを示すものであろう。反面「毎日そうだ」という回答も減少している。これは「多くの人とあいさつしよう」と努力している様子と受け取られる。
また,「7 相手からあいさつされないとあいさつを返すことができない」では,「全くない」という回答が減少している。このことから「あいさつ」に関する社会生活技能が向上したことがわかる。
4) 「ソーシャルトレーニング」に関するアンケート結果
試案の実践後に実施したアンケート結果は,[資料3-9]の通りである。
「1 あなたの「あいさつをする」という社会的スキルは少しは向上したと思いますか」の結果を見ると,「思わない」と回答した生徒は,全体の10%未満で今回の実践によって 社会生活技能が向上した と受け止めている様子がわかる。
さらに「2 このような杜会的スキルを向上させることは役に立つと思いますか」「3 他の杜会的スキルについても向上させたいと思いますか」の結果から,生徒は社会生活技能の必要性を前向きに受け止めていることが感じられる。
また,4と5の結果から,このようなトレーニングを楽しく受け止めており,本実践は難しくはなかったことが理解できる。
しかし,「6 ソーシャルトレーニングによって今まであまり話さなかった人とも話すことが多くなったと思いますか」の結果では「思わない」と回答した生徒が少なくなかった。このトレーニングによって,今まで話さなかった人とも話をするようになることを期待したが,実践の成果が,実際の社会生活技能としては反映されにくい側面があるようだ。
一方,「7 学級の雰囲気が明るくなったと思いますか」「8 居心地のよい学級に変わってきたと思いますか」の結果を見ると,これらの項目については肯定的な回答が80%を越えている。
本試案は,一人一人の社会生活技能の向上を目指したものであるが,二次的な効果として,雰囲気が明るくなり, 居心地のよい学級に変わっていった ものと思われる。
[資料3-9]