研究紀要第101号 「学力診断テスト開発に関する研究」 -002/170page

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 2 可能性の伸長をめざす教育評価

 従来の教育の理念を改めた今次改訂の学習指導要領においては,知識・理解・技能の認知面を中心とする学力の考え方を,知識・理解・技能を支える意欲・関心・態度や,思考力・判断力・表現力をより重視する考え方に改めた。この考え方に基づき,児童生徒一人一人の内発的な学習意欲を喚起し,自ら学ぶ意欲,思考力,判断力,表現力などの資質や能力を学力の基本とする考えに立ち,学習指導の創造・展開に授業観の方向転換を求めるとともに,指導要録の評価の観点を学力の4つの構成要素として明示した。
 本テスト問題開発は,こうした考え方の下に,特に指導要録の評価の4つの観点に倣い,関心・意欲・態度も重要な学力の要素であるとの認識に立ち,児童生徒一人一人の可能性の伸長を願い,総合評価を目指した、
 開発の方針としては,個々の児童生徒の認知面の陥没点を明らかにし,欠陥補正型を主たる目的とする「領域別の学習結果」重視の考え方を排した。すなわち,児童生徒の基礎的・基本的な内容を「知識・理解」「思考・判断」「技能・表現」の観点からどの程度達成できたかを,指導目標に照らして評価することに改めたことである。また,これらの3つの観点については,児童生徒の可能性の伸長に役立つ評価資料となるよう,発展問題を盛り込んで作成している。加えて,教科に対する「関心・意欲・態度.の情意面を診断する問題の比重を重視し,児童生徒の学力を総合的に評価できるようにした。

III 診断テスト間題開発の特色

  1 めざすテストと研究成果の普及
 新しい学力の考え方は,児童生徒が主体的に考え判断,表現できる人間として,土きて働く力と成り得る資質・能力の育成を重視している、それは,学ぶ意欲・関心・態度や思考力・半j断力・表現力などを基軸に,知識・理解・技能の創造的な発展との調和を求めているということである。
 そこで,このテストでは,こうした精神を最大限取り入れていくことに努力するとともに,児童生徒のよさを積極的に認め,「自己学習能力」の向上に役立てることができるようにした。このことは,児童生徒が自らの評価結果から学習能力を判断し,自分の「よさ」の伸長に生かすことのできるような性格を持った結果の出るテスト開発の推進ができると考えたのである。
 また,本テストを学校現場で活用することで,新しい学力と評価の在り方についての考えを深める契機となり,教帥の評価問題作成における一視点の提供にもなると考えた。
 こうした活用へのアプローチと,その効果を期待し,小学校4年以上中学校3年まで連続した学年で使用できるよう,次の教科内容について研究開発に取り組んだ。
 ・小学4年 国語 杜会 算数 理科
 ・小学5年 国語 社会 算数 理科
 ・小学6年 国語 社会 算数 理科
 ・中学1年 国語 社会 数学 理科 英語
 ・中学2年 国語 社会 数学 理科 英語
 ・中学3年 国語 杜会 数学 理科 英語

  2 到達度の設定

(1) 検証仮説と到達度の設定
 予備テスト問題試案作成にあたって,検証のたの仮説を設けるとともに,諸条件を整えた。
 学習指導要領に示すす当該学年の基本的な内春を十分獲得されているとすれば,どの児童生徒も100%到達できるであろう(目標値)問題を70%,発展的な問題を30%で構成する。
 従って,児童生徒の推定される到達率は、・学習により基本的な内容が十分獲得されていれば70±α%になるであろう。


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