研究紀要第101号 「学力診断テスト開発に関する研究」 -005/170page
IV 各教科研究開発の実際
国語科
1 教科でめざすテスト開発
学力診断テストの開発にあたって,国語科では,次のような基本方針を立て,テストの開発を進めた。
(1)小学校では,特に「言語についての知識・理解・技能」に重点をおき,設問数を多くする。
中学校では,特に「理解の能カ」に重点をおいて,設問数を多くする。
小学校では,「言語事項」として,「文字」「表記」「語句」「文語調の文章」「文及び文章」「言葉遣い」などの項目について,数多くの内容を学習する。これらの内容は,正確な理解や適切な表現をするための基礎であるとともに,中学校・高等学校で学習を進めていく上でも,基礎となるものである。こうした力は,小学校の段階で,確実に身につけておく必要がある。そこで,特に,「言語についての知識・理解・技能」について重点をおくようにした。
中学佼の「理解」の学習では,小説,随筆,ルポルタージュ、論説など,多種多様な文章に接し,これらの文章をより正確に理解していく力が必要となる。また,古典も学習するようになり,古典を理解する基礎を養い、古典に親しむ態度を育成していくことが必要となるこそこで,特に、「理解の能力」について重点をおいた、
(2)「聞き取り」の問題を必す設定する。
学習指導要領の改善の一つに、音声言語の指導の重視があげられている。音声言語の指導内容には,「聞くこと」,「話すこと」,「話し合い」などがある。本テストは,ぺ一パーテストとして行うため,その中でも,「聞くこと」を取り上げ,「聞き取り」の問題を必ず設定するようにした。
(3)「表現の能力」の問題は,作文を書く際の技能を焦点化して問題を作成する。
本テストの診断の仕方から,「表現の能力」をそのまま測ることは困難であるため,作成途中のある作文や構想メモを提示し,作文を書いていく際の,特に大切と思われる技能を焦点化し,問題を作成するようにした。
2 要素表に基づく設問項目の設定
設問項目を設定する際に,まず,要素表を作成した。
国語科では,要素表の「学力診断の観点」として「国語に対する関心・意欲・態度」,「理解の能力」,「表現の能力」,「言語についての知識・理解・技能」の4つを設定した。
作成した要素表の一例として,中学校3年の「理解の能力」の部分を以下に示す。
観点 理解の能力 到達目標 話や文章の構成や展開に即して主題や要旨をとらえ,話し手や書き手の立場や考えの進め方,表現の仕方や特徴などに注意して,自分の見方や考え方を深めなから内容を的確に理解する。
診断要素 診断内容
内容把握と要約 ○話や文章の展開に即して,的確に内容をとらえ,目的や必要に応じて要約することができる。 ものの見方や考え方 ○話や文章に生かされているものの見方や考え方を理解し,自分の見方や考え方を深めることができる。 構成や展開 ○話し手や書き手の考えの進め方をとらえ,内容の理解や自分の表現に役立てることができる。 語句の意味や用法 ○文脈の中における語句の効果的な使い方について理解し,自分の表現に役立てることができる。