研究紀要第101号 「学力診断テスト開発に関する研究」 -009/170page
社会科
1 教科でめざすテスト開発
学力診断テストの開発にあたって,社会科では,次のような基本方針を立てテストの開発を進めた。
(1) 学習指導要領「社会」の内容のほぽ全てにわたって小問を作成する。
それぞれの学年における学習の実現状況を把握するためには,出題範囲にかたよりがあってはならない。また,基礎・基本という観点から,教科書に記述のある項目に関する問題に眼定するようにした。
(2) 「社会的事象についての知識・理解」の問題は.単発的な出題にならないよう工夫する。
社会科で「知識・理解」を問う問題を作成する場合,それぞれの学習項目になんらかの関連性をもたせて出題しないと,単発的な問題の羅列になるおそれがある。このことを解消するために,問題文を会話形式にすることによって,学習項目問に関連件をもたせるようにした。
(3) 「観察・資料活用の技能・表現」の問題は,資料の読み取りだけにならないようにする。
資料活用能力をぺ一バーテストでとらえようとする場合,どうしても資料の読み取りを中心とする問題が多くなってしまう。本テストでは,実際の授業での子供たちの活動をイメージし,資料収集・選択,資料提示の表現能力などもとらえられるような作問の工夫をすることにした。
(4) 「社会的な思考・判断」の問題は,多肢選択法を中心とした問題とする。
多肢選択法は,テスト技法として最もよく用いられ,採点の客観性も高い。単なる知識を問うものでなく,思考力や判断力を測定できるよう,選択肢の作り方を工夫するようにした。
以上のような方針に基づき,「知識・理解」,[資料活用」,「思考・判断」の各観点ごとの出題割合を4:3:3とし,全体を通して,基礎的・基本的な問題を約7割,発展的な問題を約3割として構成した。
なお,「社全的事象への関心・意欲・態度」の問題については,質問紙法により学習の傾向性や事象への関心の度合いをとらえ,あわせて,記述法の設問をオープンエンドなものとすることにより豊かな発想や学習への意欲をとらえられるようにした。
2 要素表に基づく設間項目
設問項目を設定する際に,まず,要素表を作成した。その一例として,小学校5年の「観察・資料活用の技能・表現」の一部を以下に示す。
観点 観察・資料活用の技能・表現 到達目標 地図,年表,統計などの基礎的資料を効果的に活用し,その過程や結果を具体的に表現する。
診断要素 診断内容
日本の農業の現状や特色 ○わが国の主な農産物について,その分布状況や生産高を地図や資 料で調べたり,表やグラ7で読み 取ったり,白地図に整理したりす ることができる。
○稲作の盛んな地域について,地 図や統計査料,写真等を用いて, 白然や土地利用の特色を調べるこ とができる。
○野菜づくりが盛んな地域につい て,気候,地形,その他の地理的 な条件とのかかわりがわかる資料 を調べ,まとめることができる。農業に従事している人々の努力・工夫 ○稲作農家について,仕事のよう すや機械化,労働時問,生産を高 める努力や工夫などを適切な資料 を収集・選択して調べ,稲作農家 の現状をまとめることができる。