研究紀要第101号 「学力診断テスト開発に関する研究」 -012/170page

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5 次の文は、日本とアメリカの貿易摩擦について説明したものである。
 アメリカでは,1960年代の末から,せんい,鉄鋼,テレビ,自動車,半導体などの日本製品の[ア]が問題となり,それを規制しようとする動きが起こった。また,アメリカからの[ア]を増やすよう日本市場の[イ]を求める声が強まった。これらの間題が貿易摩擦といわれる。
1.[ア]・・輸出、[イ]・・閉鎖

2.[ア]・・輸入、[イ]・・閉鎖

3.[ア]・・輸出、[イ]・・開放

4.[ア]・・輸入、[イ]・・開放

 社会的事象には,是か否か割り切れないものが多い。ある側面から見ればそれは正しいように見えるが,別の側面から見つめ直すとそうとも言えないことが実に多く存在する。1の問題などはその代表的な例である。設問は,完成法と多肢選択法を組み合わせ,文脈の中で解答を考えるようにしてある。このように,素材そのものが社会的思考・判断にかかわるものを取り上げ,さらに,設問の仕方を工夫することによって,「社会的な思考・判断」が見られるよう工夫した。
 5の問題についても,同じようなことが言える。
ここでは,時事的な問題を取り上げ,完成法と多肢選択法の組み合わせで文脈を考えさせようとしている。時事的な事柄だけに,現在の状況(日本人としての立場)で考えがちであるが,問題文を「アメリカでは,」で始めることによって,日本人としての見方だけでない思考をさせるようにした。自分の立場を明確にすることによって,より客観的な見方ができるかを問う問題とした。

4 信憑性,客観性を持たせるための工夫
○ 中学校1年,「社会的事象についての知識・理解」の問題例
[1] 次の(1)〜(3)の文章は、二朗君の地理の学習のようすを示したものである。文中の(A)〜(J)にあてはまることばを、それぞれの語群から選び、番号で答えなさい。

(2)図書館での調べ学習
二郎 :さばくや乾燥地帯で生活するのは,本当に大変そうだな。
映子 :でも,オアシスから(D)という地下水路をつくってかんがい農業をするなんて,人間ってたくましいと思うわ。
良男 :アマゾンみたいに,すごい熱帯雨林地帯も,世界にあるよ。
和枝 :それって,(E)のこと。
  ―以下略―

語群 1.小麦 2.イヌイット 3.クリーク
   4.セルパ 5.カナート 6.パンパ
   7.じゃがいも 8.フィジー人
 問題に信鰻性,客観性を持たせるために,予備テスト・本テストの結果を分析して,問題の修正,差し替えなどの工夫をした。
 上記の問題では,(E)は難易度の低い基本問題として設定したが,予備テストの正答率が23%と低かった。原因を探ったところ,「セルバ」は教科書に出てこない事項であることが分かった。そこで,「それって,(E)のこと。」を「アマゾンって(E)にあるのね。」という問題文に直し,語群の「セルバ」を「アマゾン」,「パンパ」を「アルゼンチン」と直すことによって,問題の難易度が適切なものとなるようにした。


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