研究紀要第101号 「学力診断テスト開発に関する研究」 -020/170page

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由に記述させ,できるだけ多くの回答を求めることをねらいとしている。既習の知識・理解にはとらわれず,また,知識の量には関係なく,生徒が感じたことをありのままに記述させることによって,自然の事物に対する関心や,それを調べようとする意欲の程度を診断しようとするものである。
 自然の観察は理科の学習の基本であるが,ただ漫然と眺めているだけでは観察とは言えない。例のような動物の観察についていえば,どんなところに特徴があるのか,他の動物との類似点はどこか,相違点はどこかなどという目的をもって見ていくことが大切である。さらに,外見的な特微だけでなく,体の内部のつくり,食性,殖え方,呼吸のしかた,神経の有無,変態の有無,刺激への反応,生存期間など様々な観点に基づき発展的に調べていくことが考えられる。
 理科においては,身に付けた基礎的,基本的な知識や理解を基に自然の事象を探究し理解していくことが大切であるが,場合によっては,既成の概念にとらわれず自由に考えていくということも必要である。

○中学枝第3学年「自然事象への関心・意欲・態度」に関する問題
 あなたが宇宙飛行士として宇宙船に乗り,無重力状態の所で自由に実験できるとしたら,どんな観察や実験をしてみたいと思いますか。できるだけたくさん書きなさい。

 最近は,宇宙船の中の様子がテレビ中継されるなど,無重力状態も身近な事象になってきている。
この問題は,自分が宇宙飛行士になったと想定し,無重カ(無重量)状態の所でどんな観察や実験をしてみたいかと問うことで,自然事象への関心や,それを調べようとする意欲の程度を診断しようとするものである。

4 信葱性,客観性を持たせるための工夫

○中学校第2学年「科学的思考」に関する問題
 次に示すような特徴を持つセキツイ動物A,Bは,それぞれ,どのような仲間に分類されるか。次の1.〜4.の中から正しいものを1つ選び,その記号を書きなさい。

[動物A]:子供は親と似た姿で生まれ背骨がある。体は体毛でおおわれ,空を飛べる。
[動物B]:子供は卵で生まれ、えらで呼吸し,背骨がある。また親になると肺で呼吸する。
1. 動物Aは鳥類,動物Bは爬虫類(はちゅうるい)である。
2. 動物Aは哺乳類(ほにゅうるい),動物Bは爬虫類(はちゅうるい)である。
3. 動物Aは鳥類,動物Bは両生類である。
4. 動物Aは哺乳類(ほにゅうるい),動物Bは両生類である。

 この問題は,セキツイ動物の仲間分けができるかどうかを問う問題である。動物Aについては,「子供は親と似た姿で生まれる」ことから,この動物は哺乳類であることが容易に判断できるため,正答率はかなり高いものと予想したが,予備調査によるそれは7.4%と,極めて低い値となった。誤答例は「空を飛べる」ところから動物Aを鳥類と考えて3.と解答したものが大部分であった。動物Aの特徴を総合的にとらえることができず,「親と似た姿で生まれる」という特徴よりも「空を飛べる」ということだけで直感的に,鳥類と判断してしまったことが原因であろうと考えられる。
 動物Aはコウモりであり,唯一空を自由に飛べる哺乳類である。原文のままでは鳥類に誤解されやすいため「暗やみの中でも空を飛べる」と訂正し,哺乳類であるコウモリを意識できるように配慮した。動物Bについては「子供はえらで呼吸し,親になると肺呼吸になる」ことから両生類であることが容易に判断できると思われるのでそのままとした。


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