研究紀要第103号 「児童生徒の学校適応への指導援助の在り方に関する研究」 -061/170page

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を見渡して行動することはできない。
 3. 高等学校
 順応のD男は,自分の考えは持っているものの,いざ行動の段階になると級友に同調することが多く,自分一人でも何かをやろうとすることの少ない生徒である。
 D男の学級は,自分の考えを述べやすい雰囲気をもっており,ホームルームなども活発である。しかし,担任は「もう一歩,積極性がほしい」と感じている。
(2)構成的グループ・エンカウンターの選定
 1. 構成的グループ・エンカウンターについて
 本年度は,学級の好ましい人間関係を育成するために,構成的グループ・エンカウンターの6つの体験のうち,順序性を考慮し,主に以下の1.〜3.の3つを中心に,実践することにした。
1. 自己覚知(ホンネを知る)
2. 自己開示・感情表現(ホンネを表現する)
3. 自己主張(ホンネを主張する)
4. 他者受容(他者のホンネを受け人れる)
5. 信頼感(他者の行動の一貫性を信ずる)
6. 役割遂行(他者とのかかわりをもつ)

 2. 発達段階と構成的グループ・エンカウンター構成的グループ・エンカウンター選定にあたっては,発達段階や学級の実態に応じた内容にすることが大切である。そこで,文献等でマニュアル化されている内容を参考にし,担任と協議しながらそれぞれの学級にふさわしいものとなるよう工夫した。
 各校種別に特に留意した点を,以下に述べる。
 ア 小学校
 「非言語的コミュニケーションが,行動変容を促進する」と言われるように,構成的グループ・エンカウンターでも,非言語的コミュニケーションの果たす効用は非常に大きい。
 そこで,小学校での実践では,言語能力が未熟な発達段階の学年でも,児童の実態に合わせた非言語的な表現方法を工夫することにより,構成的グループ・エンカウンターを実践することが可能である。
 したがって,小学校では各学年の発達段階を十分にふまえ,マニュアル化されている内容をそれぞれの学年の実態に応じて,表現の仕方などを工夫することが大切である。
 〈3年生〉
 この学年の発達段階では,上記のように自分の気持ちを言語化することが十分にできない児童も多い。
 そのため,まずは身体を使ってのびのびと自分を表現できる内容の演習を選び,何でも自由に言い合える人問関係づくりを行うことにした。そして,その後に,友達を知るためのきっかけづくりとなる演習を設定するのが望ましいと考えた。また,内容そのものや進め方においては,3年生でも容易に取り組むことができるよう配慮した。
 <5年生〉
 5年生になると,自分の考えをかなり言葉で表現できるようになる。そこで,身体による表現を取リ入れながら自己表出させ,楽しい雰囲気づくりを行った上で,友達への興味関心を持てるような演習や自分に対して友達がどんな見方をしているのかを知る演習を構成することにした。
 イ 中学校・高等学校
 中学校・高等学校では,以下のような点に留意して演習を選定した。
○ 学年,学級の実態・発達段階に応じ,どんな体験をさせることが必要なのか,また,そのためにはどんな演習の内容が適しているのか考慮する。
〇 質問項目を作る際は,生徒の意見を反映させ,実態にあったものにする。
〇準備等がそれほど負担にならず,1時間の授業として,生徒や担任がともに取り組みやすい内容を選定する。
(3) 本年度の実践計画
 1. 構成的グループ・エンカウンターの実践計画
 本年度の構成的グループ・エンカウンターの実践計画は次のとおりである。(資料3)
各演習の実践時間は授業時間1時問とした。分割の場合は朝や帰りの会などの時間を活用し,10分間


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