研究紀要第103号 「児童生徒の学校適応への指導援助の在り方に関する研究」 -063/170page
オ あいさつ運動
3 実践
実践として,校種別の演習の概要と高等学校の具体的実践例を紹介する。
(1) 実践の概要
校種別に実践した演習の概要は,以下のとおりであった。(資料4〈小学校〉,資料5〈中学校〉,資料6<高等学校〉)
事前に担任との打ち合わせを行い,指導援助案の中に教師の働きかけを明示して実践にあたった。
校種別には,特に次のような点を工夫した。
1.小学校
○ 演習が遊ぴに終わらないように,演習を始める前に,きちんとねらいを意識づけるようにした。
○ 動きを伴う演習では,その学年の発達段階に応じてスムーズに活動できるように配慮した。(資料4の留意点参照)
○ 順応の児童へ目を向けた指導援助を工夫し,効果的な漬習が行えるようにした。(資料4の順応への手だて参照)
2.中学枝
○ 本音を出しやすい雰囲気づくリを行うため,第1回目に身体を使った演習を実施し,その後,徐徐に感情や気捺ちを表現できる内容に配列した。
○ 演習中は,できるだけ指示・命令的な言葉や口調を避け,生徒が主体性を発揮し,自己主張できるよう努めた。
○ 生徒の発表に対しては,全てを肯定的に受けとめ,特に少人数の考えを大切に取リ扱うようにした。
○ 演習前後の変容を見るために,意図的に抽出生徒を指名し,できるだけ順応生徒を生かした。
(2) 実践例
実践例として,高等学校の本年度最後に実施した
「アサーション入門」を紹介する。(資料7)がその指導援助案である。
演習にあたっては,「指導援助の記録」(資料8)を活用しながら,担任と協議して進めた。工夫した点を事前,演習中,事後の各段階に分けてまとめてみる。
1.事前の段階
◎ 「指導援助の記録」の2〈特に工夫・改善した点〉に沿って,“ねらい"などを順応の生徒を念頭に作成した。
◎ 指導援助案は,担任の経験が浅いので留意点を*印で表した。
◎ 記入用紙(資料9)の質問項目の作成については,HR運営委貝の生徒(順応の生徒も含む)を入れて話し合って決定した。
(資料9)「アサーション入門」の記入用紙
1.どの季節が一番好きですか。
ア.春 イ.夏 ウ.秋 工.冬
2.百万円もらったらどうしますか。
ア.みんなで使う イ.一人で使う
ウ.貯金する 工.寄付する
3.どんな人と結婚したいですか。
ア.かわいい人 イ.明るい人
ウ.美人な人 工.やさしい人
4.どれを改善したいですか。
ア.顔 イ.頭脳 ウ.スタイル エ.性格
(後略)
2.演習中
演習中は,「指導援助の記録」の3〈抽出者の様子〉の欄を活用した。これは,適応,順応,不適応の各グループから2〜3名を抽出し,特に順応の生徒を中心に観察記録するものである。